おしい!食べられるんです!
ヤマドリタケ
食
写真と文章/新井文彦

日本には、もしかしたら、1万種を超えるほど、
たくさんのきのこが存在していると言われていますが、
そのうち、名前が付けられているのは、3000種ほど。
つまり、食べられるとか、毒があるとか、それ以前に、
多くのきのこがまだまだ未知なんです。

ですから、よく知っているきのこ以外を食べる、
ということは、銃弾がたくさん入っている拳銃で、
ロシアンルーレットをやるようなもの……。
誤食したら人を死に至らしめる毒きのこも、
別に珍しくありませんからねえ。

ぼくは、基本的に、
きのこを食べて楽しむというより、
生きものとして、その生や、姿形の美しさを、
楽しませていただきたいと思っています!

とか何とか、口の中につばをいっぱいためて、
エラソーなことを言っても説得力ありません(笑)。

ええ、そうですとも、この写真のきのこは、
日本名こそ「ヤマドリタケ」と言いますが、
その正体は、泣く子も黙る、ポルチーニ茸。
もし、このきのこを見つけてしまった場合、
採取しないなんてありえません、はい(笑)。

ね、すごくかわいいでしょ。
そして、おいしそう……。

日本では、少し前まで、
ポルチーニ茸が確実には確認されていない、
ということで、類似している、
ヤマドリタケモドキムラサキヤマドリタケなどを、
一緒くたにして、日本のポルチーニ茸と称し、
味も香りも歯ごたえも欧州ものに比べてイマイチ、
というような評価がなされていたようです。

しか〜し。
我が北海道には、正真正銘、
本場物に勝るとも劣らないポルチーニ茸が、
生えるんです、はい。

ヤマドリタケは、夏から秋にかけて、
主にトウヒ属やモミ属の樹下から発生します。
北海道で最大の森林面積を誇るトドマツは、
まさに、マツ科モミ属。

傘は、直径20cm超も珍しくなく、
黄〜赤〜茶など各種褐色系で手触りなめらか、
湿ったときにはやや粘性があります。
傘裏の管孔は、最初白く、やがて黄色〜緑色に。
淡黄色〜淡褐色の柄の上部には網目模様があり、
肉は白く、傷つけても変色しません。
すごくしっかりしたきのこです。

お味はもう説明する必要はないでしょう。
フライパンにエクストラヴァージンオイルを入れ、
刻んだニンニクをぱらぱらと投入して香りを出し、
やや厚めに切ったヤマドリタケをさっとソテー。
たったこれだけの手間で、お口が天国……。
うう、文章を書いているだけで、よだれが……(笑)。

きのこの楽しみ方は人それぞれ。
観察するもよし、食菌を探すもよし。
ニンゲンも、きのこも、最初の生命誕生以来、
想像を絶するほど長い年月を生き延び、
同じ時代、同じ地球に生きている進化最先端の生物。
尊重することはあっても軽視することは無いよう、
いつも意識していたいと思います、はい。

そこらに生えているからといって、
無闇矢鱈にきのこを蹴飛ばすのはやめましょうね。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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