おしい!食べられるんです!
ムキタケ(オソムキタケ)
食
写真と文章/新井文彦

きのこは、地域差や個体差がけっこうあり、
大きさや色が図鑑と違うなんぞ、もう、当たり前。
慣れるまでは、ほんと、苦労の連続です。

フィールドで実物のきのこを見ているうちに、
どんどん鑑定眼が確かなものになっていくのが嬉しくて、
暇を見つけてはフィールドへと繰り出し、
そうするときのこを見る目がどんどん養われて、
それが嬉しくてまたフィールドへ出かけ、
はい、熱烈きのこファンのできあがり、と……(笑)。

例えば、阿寒の森で発生するベニテングタケは、
傘が真っ赤な個体、オレンジ色の個体、
そして、真っ黄色の個体があるのですが、
分類的にはまったく同じベニテングタケです。

また、ハナオチバタケも、傘の色が、
褐色バージョン、ピンク色バージョンがあり、
形は同じだけど複数の色を持つというきのこは、
けっこうたくさん存在します。

今回ご紹介するムキタケも、
傘の色が、褐色系、緑色系、紫色系があることは、
きのこ好きの間では、周知の事実でした。

ぼくも、なんとなく、
早い時期に発生するのが褐色で、
遅れて発生するのが暗緑色だと思っていました。

ところが、2014年の暮れのこと。
あるニュースがきのこファンの話題に。

弘前大学農学生命科学部環境微生物学研究室が、
傘の色が褐色系のムキタケと緑色系のムキタケの、
遺伝子情報の分子系統解析を行ったところ別種と判明。
やや遅く発生する、傘が緑色のムキタケに、
別の名前を付けることを提案した……。
(河北新報の記事を要約)

その別名というのが、オソムキタケ、です。
遅く発生する、という意味でしょう。

今回掲載した写真を見ていただくと、
真ん中の下に写っている褐色のきのこがムキタケで、
倒木の上側に生えているのがオソムキタケではないかと。
(もしかしたら違うかもしれませんが……)

ムキタケは、きのこシーズンの最後を飾る晩秋に、
広葉樹の立ち枯れた木や倒木から発生します。
傘は直径5〜10cmのほぼ半円形で、ヒダは白。
傘の表皮は剥がれやすく、それゆえ、
ムキタケという名前がついています。

表皮の下にはゼラチン質の層があり、
触ると、瑞々しくて、プルプルです。

晩秋を代表する食菌で、
水分が多いため天ぷらには向きませんが、
おだやかな味と香りを持ち、鍋物や汁物に最適です。
(形がツキヨタケと似ているので要注意)
オソムキタケの方がゼラチン質の層が厚く、
プルプル感がより楽しめます。

遺伝子情報を使った分子系統解析が一般的になり、
今や、きのこの分類が激変しつつあります。
しかしながら、ぼくは、これまで通り、
分類にはそれほど重きを置かず、
のほほんと、きのこを楽しもうと思っています。

かわいいきのこを見たり撮ったりするのが第一で、
きのこの名前を調べるのは、二の次、三の次です。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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