おしい!食べられるんです!
ブナハリタケ
食
写真と文章/新井文彦

いかにもきのこ!という感じの、
芳香とも悪臭ともつかないやや強い香りが誘引するのか、
はたまた、朝露をしのぐ傘代わりに丁度いいのか、
とにかく、ブナハリタケのそばに寄ると、
湧き出すように、コバエがぶわ〜っと飛び立つのが常。
虫嫌いな人には想像もしたくないような光景かと。

この写真にはたまたま虫が写ってませんが、
以前、ブナハリタケをご紹介したとき同様、
放出された胞子がはっきり確認できます。

ブナハリタケに限らず、
そもそも、きのこ=子実体=というものは、
胞子をつくって散布するための器官なので、
成菌は常に胞子を放出していると考えるのがよろしい。
(人間の目で確認できるかどうかは別にして)

従って、ほぼ無風のとき、
真正面から射しこむ太陽光(逆光状態)を、
きのこで遮るようにして傘の裏側を凝視すると、
高い確率で胞子の放出シーンを見ることができます。
(直射日光が目に入らないようご注意のほどを!)

ふわり、ふわりと、宙を漂う胞子……。
太陽光との関係なのかいつも虹色に見えるんですよね。

さて。
ブナハリタケは、夏の終わりから晩秋にかけて、
ブナやカエデなど広葉樹の枯木や倒木に、
重なりあうように群生します。

半径3〜10cmくらいの半円形〜扇形で、
全体的に色は白く、厚さは1〜2cmほど。
傘の裏側は長さ5mmほどの針状になっていて、
まさにその名のごとく「ハリタケ」です。

各地で食用にされるきのこですが、
香りが特徴的でやや強いため、
茹でこぼしたり、一度塩蔵したり、
もしくは強めの味付けで調理するとよいとか。

山と溪谷社・増補改訂新版『日本のきのこ』には、
「炊き込みご飯はマツタケに似た香りがする」
とあるのですが、ぼくはまだ確認したことはありません。

ちなみに、お店で買ったぷりぷりのシイタケも、
背景を暗くした状態で後ろ側から強い光を当てると、
ヒダからふわりと漂い落ちる胞子を確認できます。
見てみると、とても神秘的で、想像以上に感動しますよ。

きのこは、本当に、興味深いです、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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