不正解、食べられます!
ニカワハリタケ
食
写真と文章/新井文彦

小さい頃から猫舌でした。
ラーメンはぼくの大好きな食べ物ですが、
そう、基本的に、熱々です。
好きだけど、食べるのは苦手……。
なかなか複雑で情けない状況ですな。

その昔、大学生の頃に暮らしていた街に、
当時、東京で5本の指に入る人気ラーメン店があり、
一度食べてみたらやみつきになってしまって、
夏でも冬でも毎週のように通い続けました。

ぼくが思うに、ラーメンは、
箸ですくった麺を何回も何回も口元まで運ぶよりも、
ずるずるとすすって食べる方がおいしいです。
ところが、猫舌には、それが至難の業。
しかし、何回となくラーメン店に通いつづけ、
あちち、あぢぢと舌先を火傷しているうちに、
天啓を得ました。

そう、熱く感じるのも、火傷するのも、
すべては舌先でのこと。
ならば、舌先で感じる熱さを緩和できたら、
熱々でもずるずるとラーメンがすすれるはず!

いざ、実行!

下の歯の裏側に舌先をつけてラーメンをすすると、
さあ、どうしたことでしょう……。
長年の苦痛がまるでウソのように、細目のちぢれ麺が、
ずるずると口の奥へ運ばれていくではありませんか!
長年の猫舌が……。

ええと、すみません。
ラーメンのことが少しでもからむと熱くなってしまい、
ついつい暴走してしまいました……。

今回ご紹介するきのこは、ニカワハリタケです。
細長い半円形で、ぷりぷりで、裏がとげとげ。
これって、何かを彷彿させませんか?
そう、猫の舌です……。

ニカワハリタケ、またの名を、ネコノシタ。
猫好きの方は、にやり、ですね。

夏が終わりを迎えるころ、
針葉樹の落枝や倒木から発生するきのこです。
半円形〜しゃもじ形〜扇形で、
顕著な柄を、持つ持たない両方の場合があります。
長さは2〜3cm、厚さは0.5〜1cmほど。
ゼラチン質で、上面は薄灰色〜淡褐色、
下面には短い針状の突起が密集しています。

こんな形状をしてますが、何と、食べられます!
クセのない味で、ぷりぷりのきのこと言えば、
シロキクラゲがありますが、それと同じく、
さっと湯がいて酢の物などに、あるいは、
甘みのあるシロップをかけるならば、
きのこ料理フルコースの最後を飾るデザートに。
ぷりぷりの食感が楽しめるそうです。

ちなみに、舌そのものの構造は、
個人差がほとんどみられないので、
いわゆる猫舌は、病気でも異常でも何でもなく、
単に舌の使い方がヘタなのだ、という説が有力です。

つまり、努力をすれば、猫舌は解消できます。
そして、麺類をすすれないという人も、
練習すれば必ずすすれるようになります。

ラーメンは、熱々のものを、
ずるずるすすって食べるに限ります。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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