これは、食毒不明なんです。
テングタケ
毒
写真と文章/新井文彦

テングタケは、菌根菌です。
そう、キンコンキン。
菌根菌とは、菌類と樹木が一緒に形成する、
菌根という器官を使って、植物と共生する菌類のこと。
つまり、ええと、
菌根菌と樹木は菌根を通じて地中でつながっていて、
お互いに栄養のやりとりをしているんです。

森の植物のおよそ8割くらいが、
菌類と何らかの共生関係を持つ!という説もあり、
1種の樹木が複数の菌類と関わり、
1種のきのこが複数の樹木と関係するなら、
森の地中の至るところに、縦横無尽に、
菌根ネットワークが張り巡らされていて、
植物と菌類が有効に活用している、ということ。

同じ種類の植物が菌根ネットワークを通じて、
害虫や細菌に関する警戒情報をやりとりしてる、
なんて研究結果もあるとか。

うわあ、すごいですよね!

森で生きる生物は密接に関係し合って、
ひとつの世界をつくりあげているのだなあ、
と感慨もひとしおです。

さて。
この写真を撮影したのは、
ほぼ日読者の方ならすっかりお馴染みの、
阿寒川上流部の小さな沢にかかっている、
通称「ナミダ橋」付近です。

まだ傘が開いていない、テングタケの幼菌、
これがまた、かわいいんですよね。
ベニテングタケしかり、タマゴタケしかり、
テングタケの仲間の幼菌の愛らしさは、
個人的主観ではありますが、きのこの中で随一です。

テングタケは、夏から秋にかけて、
主に広葉樹の森で見られる中型〜大型のきのこ。
時に直径が15cmを超えることもある傘には、
全面に白いイボが付き、周縁部には条線があります。

以前ご紹介したイボテングタケにそっくりなのですが、
それもそのはず、つい最近まで同種扱いでした。
テングタケは、小さいとか、広葉樹林に生えるとか、
違いを見分けるポイントがいくつかあるのですが、
正確に分類するには顕微鏡にご登場願わねばなりません。
どちらであるにしても、毒きのこなので要注意です。

もし誤食した場合、
イボテングタケ同様、死ぬほどではありませんが、
食後30分ほどで、腹痛、嘔吐、下痢、
発汗、めまい、興奮、幻覚などの症状が出て、
ひどい場合には、昏睡や呼吸困難も!
でも、まあ、通常は、1日くらいで回復するとか。

主要な毒成分であるイボテン酸のうま味成分は、
あの、うま味調味料でお馴染みの、
グルタミン酸ナトリウムの10倍もあるのだとか!
おいしいのはわかっているけど、食べちゃダメです。

我々が一般的に「きのこ」と呼んでいるのは、
きのこのほんの一部、生殖器官の子実体のこと。
時には、地中や木の中に広がっている、
糸状のきのこの本体(菌糸)のことを想像して、
森全体に広がるネットワークに、
思いを馳せてみてください。

ちょっとだけ、森が違って見えるかもしれません。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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