食毒不明。疑わしきは食せず。
アシボソノボリリュウタケ
食毒不明
写真と文章/新井文彦

子どもの頃、近所にあった商店は、
けっこういい加減な商売をしていて、
カビが生えているパンを売ってたこともありました。
まあ、おおらかな時代だったと言えば、
そうかもしれませんねえ……(遠い目)。

「カビが生えているから交換して」
「カビの部分だけ取れば食べられるよ」

なんて会話を交わしたあと、店のオババは、
イヤイヤながらパンを交換してくれたけど、
新しい方のパンにもカビが生えていたりして(笑)。

そのあと、カビの部分だけ捨てて、
パンを食べたのか、否か?
まったく覚えてないんですけど、
何回も抗議するのが面倒くさくて、
カビの部分だけ捨てて食べちゃったかも……。

きのこに興味を持っている今なら、
はっきり、食べちゃダメ! と断言できます。

きのこはカビの一種。
目に見える大きさの子実体をつくるのがきのこで、
つくらないのがカビ、というわけです。
きのことカビの違いはたったそれだけ!

きのこやカビは菌類なので本体は糸状の菌糸です。
地面の下や木の中でどんどん成長していても、
半透明だし、細いし、肉眼ではまず見えません。
つまり、パンの表面にカビが確認できるということは、
内部では菌糸が相当成長しているってこと。
食べたら危ないです、はい。

ある時、突然きのこが生えた!
という話をたまに耳にしますけど、
目に見えない部分では菌糸が成長していたわけで、
別に珍しいことでも何でもないわけですな。

そうはわかっていても、同じ場所で、
前日には生えてなかったきのこを発見したら、
ついつい心が踊ってしまいますよね。

かわいいタマゴタケを見つけたので、
翌日、撮影するために訪れたら、
このきのこが隣にたくさん生えていたんです。
アシボソノボリリュウタケ。

高さ2〜4cmくらいの小さなきのこですけど、
なんかすごく愛嬌ありますよねえ。
以前ご紹介したことがあるノボリリュウタケの、
「足」が細いタイプなので「アシボソ」。
確かに(笑)。

頭の部分はハート型、鞍型、まあそんな形で、
きのこっぽさがまったくありません。

ノボリリュウタケは、
十分に加熱するなど調理にちょっと手間をかければ、
まったく問題なく食べられるのですが、
こちらアシボソノボリリュウタケは食毒不明。
研究が進んでないということでしょうかね。

ぼくは、きのこに貴賎なし、が基本スタンスで、
どんなきのこでもかわいい!と思えるのですが、
カビはちょっと……(笑)。
まだまだ修行が足りません。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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