不正解、食べられます!
ヤマイグチ
食
写真と文章/新井文彦

このところ、基本的に、
きのこをメインに撮影しているので、
阿寒に数ある風光明媚な場所へ出かけたとしても、
風景だけをじっくり撮影する、という機会が、
以前にくらべて、少なくなってしまいました。

ある秋の朝。
阿寒湖温泉から20キロほど離れた、
神秘の湖などと呼ばれるオンネトーへ出動。
(とはいえ、週に1〜2回は訪れています)
車窓から見える山々がきれいだったので、
ふと写真を撮る気になり、カメラを持って湖畔へ。

ところが、もう、
無意識のうちにきのこを探しているわけで(笑)。
風景写真を撮ろうというのに地面を凝視!

そして、さすが、我が「きのこ目」。
水際のギリギリのところにヤマイグチを発見。
しかも、なんて素敵なシチュエーション。

ところで、前々から、
イグチって、何がイグチなんだろう?
って思っていたのですが、この原稿を書いていて、
ふと、ひらめいたんです。

イグチを、漢字で書くと、猪口。
イノシシの口、という意味だと思いますよね。
でも、図版を調べてみればわかりますが、
イノシシの口の形状は、傘の裏が管孔になっている、
イグチ系のきのことは似ても似つきません。

一方、
イグチが成長して開いた傘がさらに反り返りった姿は、
お酒を飲む猪口(ちょこ)のように見えます。
傘裏にはヒダがないので平滑だと言えなくもなく、
つるつるした陶器の質感も遠からず。

つまり、猪口(ちょこ)に似てるからそう命名したけど、
何故か読み方は、猪口(いぐち)になっちゃった……。
と、考えれば、
無理やり納得できないこともないかなあ、と(笑)。

イグチの名前の由来をご存知の方は、
ぜひ、お教え下さい!

さて、このヤマイグチは、初夏から晩秋まで、
阿寒の森の至るところで見ることができます。
ただし、シラカバやダケカンバの下で。

傘は湿っているときやや粘性があり、
大きなものでは直径20cmを超えるものも。
傘裏の管孔は、白〜灰色です。

灰色の地に黒い点々がある柄は、
下に向かってだんだん太くなり、
根本がぷくりと膨らんでいることも多々あります。

食菌ですが、味に特徴があるわけではなく、
それほどおいしいものではありません。
まさに、その名前の通りに苦い、
ニガイグチモドキに似ているのですが、
柄に黒い点々があるかないかで見分けられます。

何を隠そう、ぼくは、
ヤマイグチだと思ってニガイグチモドキを食べ、
不味くて辟易したことがあります……(涙)。

あと、生食するとお腹をこわすのでご注意を。

ちなみに、この、風景写真的きのこ写真は、
詳しい人が見ればわかると思いますが、
フラッシュを2灯使ったり、レフ板を使ったり、
それ以外にもいろいろな工夫をしていて、
自然のように見えて実は不自然に撮影してます。
あしからず。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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