これは、食毒不明なんです。
ウラグロニガイグチ
毒
写真と文章/新井文彦

活発な火山活動を続ける雌阿寒岳の麓で、
エメラルドグリーン、あるいは、
コバルトブルーの水をたたえる湖・オンネトーは、
阿寒湖に引けをとらない道東の有名観光地。

展望テラスから眺める、
美しい湖水と、雌阿寒岳、阿寒富士の山容は、
訪れる人の心を惹きつけてやみません。

しか〜し。
周囲に広がる原生林へ足を一歩踏み入れれば、
針葉樹林、広葉樹林、針広混交林、何でもありの、
泣く子も黙る、正真正銘の、きのこ天国なのです!

木を見て森を見ず。
木を数えて林を忘れる。
木っ端を拾うて材木を流す。
鹿を追う者は山を見ず。
獣を逐う者は目に太山を見ず。
小鳥を捕らえて大鳥を逃がす。
ええと、ええと、
四字熟語で言うなら、小利大損。
実情に合わせるのであれば、
きのこを追う者オンネトーや山々を見ず。

はい、はい、何と言われようが、
きのこ探しはやめられません。
風光明媚な景色には目もくれず、
ささ、と森へ入り、足元を凝視します。

あ!
展望テラスの対岸の遊歩道脇で、
思わず一目惚れしてしまうようなきのこ発見!
ウラグロニガイグチです。

高さはだいたい15cmくらい、
傘の直径は10cm弱、といったところでしょうか。
いかにもきのこ、という形をしています。
しかも、大きくて、立派。

じっくり観察させていただきましょう。
傘は、平滑で、黄土色から焦茶色系。
雨などで濡れると粘性を帯びます。

絶妙なフォルムを描き出す灰褐色の柄は、
しっかりした肉質でぷりぷりぱんぱんです。
暗い色の縦筋を持ち、さらに、
紫っぽいワイン色の微細な鱗片も。
傷をつけると微かに紅く変色します。

イグチの仲間の特徴は、傘の裏が、ヒダではなく、
管孔と呼ばれる無数の小さな穴が空いていること。
最初はしっかり固く、成長するとスポンジ状になります。
それが黒いから、ウラグロ、というわけ。

以前ご紹介したときにも書きましたが、
成分は不明ながら胃腸系の中毒を起こすことがある、
ということなので、毒きのこだと認識してください。
食用としている図鑑もありますが、
食べない方が無難です、はい。

存在感がある立派なきのこですから、
鑑賞対象として申し分ありません。

オンネトーは有名観光地、
と書きましたが、そこは、北海道の道東地方。
内地の観光地に比べたら格段に人は少ないです。
雪解けから、また元の銀世界に戻るまで、
いろいろなきのこを見ることができるので、
きのこ好きな人は、ぜひ、お出かけください。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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