これは、食毒不明なんです。
オシロイシメジ
毒
写真と文章/新井文彦

ぼくは、思いっきり寒いことも含めて、
北海道の冬がとても好きなのですが、
それでも、まだ秋の段階では、
心の奥のどこかで、無意識のうちに、
下手すれば半年も続くかのような雪と氷の世界、
冬の到来を少しだけ拒んでいるのかもしれません。

楽しいけど、厳しい。
楽しいけど、恐ろしい。
そんな感じかなあ。

例えば、7月の初め頃だったら、
道東も東京も日没はほぼ同じく19時くらいです。
ところが、10月ともなると、
道東では30分近くも日の入りが早く、
冬至の頃に至ってはなんと45分も早く、
16時前には太陽が西に沈んじゃうんです。
(大阪と比べたらその差は1時間以上!)
けっこう大きな差でしょ?

秋の日はつるべ落とし、などと言いますが、
昼夜の長さがほぼ等しくなる秋分を過ぎると、
北海道の季節は冬に向けて一気に加速します。

夕方に森へ出かけて撮影していると、
昼間にはあまり感じなかった季節の移ろいを、
肌身でじっくり味わうことに。
15時を過ぎた頃には、一気に暗くなり、
かつ、一気に寒くなるんです、これが。

で、また、笛を吹いたような甲高い声で、
いきなりシカが鳴いたりして……。
しかも、すぐ近くで。
暗く寒くなっていることもあって、
切なく哀しく聞こえるんですよねえ……。

すぐに撮影を切り上げ、急いで家に帰り、
暖かい部屋で暖かい飲み物を飲むに限ります。

そんな、帰り際に、
車を停めた林道の脇とか、
森の奥から続く遊歩道の脇で、
とっても目につくきのこが、
この、オシロイシメジなんです。

頭の中が帰宅モードになっていて、
面倒くさくて撮影しない場合が多く、
秋になるとけっこう頻繁に目にしているのに、
写真のストックが思いっきり少なかったりします……。

道端の路上に生えることが多いので、
写真的な構図や背景の具合がイマイチ、
という場合が少なくないとはいえ、
これは、反省せねば!

オシロイシメジは、
その名前の通り、白粉をぬりたくったように、
傘から、柄から、全身真っ白けです。
傘の直径は4〜10cm弱、
つるっとしていてしっとりした肌触り。
傘裏のヒダはぎゅっと密度が濃くなっています。
柄は中空、長さは3〜10cmくらいです。

ヨーロッパ産のオシロイシメジは、
なんとマツタケのような芳香があるらしいのですが、
北海道でぼくがよく見かけるものは、
粉臭いというか、あまりいい香りではありません。

食べられるとする図鑑などがありますが、
胃腸系の軽い中毒症状を引き起こす、
毒成分を含んでいることが確認されたので、
食べるのはやめておきましょう!

そうそう、
北国の冬には、大きな「救い」があるんです。
寒さのピークは1月下旬〜2月中旬ですが、
夜が一番長いのは、冬至の12月下旬。

つまり、寒さはますます厳しくなっていくけど、
夜が短くなり、昼がどんどん長くなるんです。
それは、まさに、明るい希望、明日への活力。
冬が厳しいこそ、春の訪れは感動的です。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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