不正解、食べられます!
オオキツネタケ
食
写真と文章/新井文彦

夏から秋にかけて、
森や草地などの地面から生えてくるきのこ。
その名は、オオキツネタケ。
かつてご紹介したキツネタケの大きいやつですな。

キツネは、北海道では非常に身近というか、
普通にどこでも見ることができる野生動物。
アイヌ語では「シュマリ」と言います。

「シュマリ」「北海道」という単語で、
ピン、と来た方とは良いお友達になれるはず……(笑)。

そう、明治時代の北海道を舞台にした、
戦いあり、宝探しあり、友情あり、ロマンスありの、
冒険活劇歴史ロマンエンターテインメント漫画といえば、
手塚治虫の傑作『シュマリ』でございますな。
読んでない方は、一読をオススメします、はい。

それはさておき、北海道に生息するキタキツネは、
重篤な肝臓疾患のような症状をひきおこす、
エキノコックス症を媒介するので注意が必要です。

キツネの体内で成長した寄生虫・エキノコックスの卵は、
キツネの糞便と一緒に体外に排出されるのですが、
それを、何の偶然か、人間が摂取しようものなら、
体内で幼虫が孵化して寄生されてしまうというわけ。

エキノコックス症は、感染率こそ高くありませんが、
発症するまでに5年から10年くらいかかり、
顕著な症状が現れたときにはすでに手遅れ、
という、実に恐ろしい病気なんです。

とはいえ、野生のキツネに近づかない、
生水を飲まない、外から戻ったらしっかり手を洗う、
山菜などはよく洗う、もしくは火を通す、
など常識的な事柄を順守することで予防できます。

さて、キツネはキツネでも、
きのこのオオキツネタケの話に戻りましょう。

黄色を帯びた赤褐色系の傘は直径3〜7cmくらい。
よく見ると細かい鱗片に覆われていて、
開いてくると真ん中がややへこみます。
柄の長さは10cm前後、繊維質で縦に条紋が入り、
根本にはしばしば紫色の菌糸が見られます。

いわゆる、アンモニア菌なので、
動物のおしっこの跡によく生えるようです。
ところが、食菌(笑)。
味ではなく歯ごたえを楽しむタイプだそうです。

山と溪谷社 増補改訂新版『日本のきのこ』には、
「ごぼうと一緒にごま油で炒め、
 醤油で味付けして酒の肴にする」
と表記されています。

阿寒の森では頻繁に見かけるので、
一度くらいは食べてみようかなあ……。

野生のキツネを見て、ついついかわいくて、
車からお菓子を投げ与えた、という方もいるかと。
その気持はわからなくもないですが、
野生動物にエサをやるのは厳禁です。
(ペットだって食事は飼い主が管理してます)

スナック菓子などはキツネにとって毒も同然。
体の内側から病んでいくとともに、
そのお菓子欲しさに車に近づいて交通事故に遭う……。
エサやりは結果的に命を奪うことになってしまいます。

野生動物にエサをやらない。
北海道へ旅行される際には、ぜひ、ご留意ください。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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