正解、食べられます!
タモギタケ
食
写真と文章/新井文彦

例えば、東京とロンドンでは、
冬の寒さはほとんど同じくらいですが、
夏の気候は、まったく違います。
湿気と高温が混在する東京の夏は、
マニラとほぼ同じくらいの体感。
最近ではゲリラ豪雨と言う名のスコールも来るとか。
まさに熱帯です!

寒い冬ならば暖かい服を着れば問題ありませんが、
暑いからと言って素っ裸になるわけにはいきません。
試練の夏、我慢の夏……。

そこで、みなさん、
ジメジメ、ムシムシに疲れたら、
梅雨もなく、湿度も気温も内地に比べて格段に低い、
北海道道東地方へぜひぜひお出かけください(笑)。

盛夏でもなお爽やかな阿寒の森、
と言いたいところですが、
多種多様にして大量の吸血昆虫が襲来するわ、
ヒグマという大きなくまさんも出没するわで、
まあ、良いことばかりではありません。
あしからず。

雪が解けたら、草花が一気に咲き乱れ、
気がつけば新緑の香りが森に充満……。
北国の春は、全速力で駆け抜けます。

ぼくは、きのこが好きなので、
森の枯木や倒木に群生する黄色いきのこを見つけたとき、
阿寒にも夏がやってきたなあ、と実感します。
それこそが、北国の初夏を彩る、タモギタケです。

タモギタケは、6月から9月くらいにかけて、
ハルニレ、オヒョウ、ヤチダモなど、
主に北方系の広葉樹の枯木や倒木に株で群生します。

鮮やかなレモン色〜黄色の傘は、
直径が5〜10cmほどで、時間が経つにつれ、
まんじゅう形からロート形へと開いていきます。
ヒダは白く深く柄の下部まで伸びていて、
根本部分で数本の子実体が癒合して株を形成。
採取する時はこの根本の白い部分に、
さくっとナイフを入れるわけです。

阿寒湖温泉に住むおばちゃんたちは、
煮物、焼物、汁物にも重宝するタモギタケを、
「たもきのこ」などと称していて、
お散歩ついでによく採取しています。
探しやすい場所に生えているし、
他に似ている紛らわしいきのこはないし、
味はいいし、量も確保できるし、
ほんと、主婦の強い味方です。

それ故、阿寒湖温泉街の遊歩道沿いの倒木に、
いい状態のタモギタケを見つけたら、
おばちゃんたちに採られる前に、
さっさと撮影しなければなりません(笑)。

阿寒湖周辺では、シカの数の増加とともに、
食害によって木が枯れてしまう事例が増えています。
エサが乏しい冬、シカたちは、
樹の皮を食べて飢えをしのぐのですが、
皮をたくさん食べられた木は枯れてしまうわけです。
実は、その、大量に枯れてしまった広葉樹からは、
タモギタケが、にょきにょき……。

タモギタケがたくさんで嬉しい!とばかり、
言っていられない状況でもあるわけです、はい。
最近では、各方面でシカ対策が始まっており、
いろいろ実績を上げているようですが、
いずれにしても、問題は山積しています。

タモギタケの登場は、これで2回目。
前回の記事はこちらをご覧ください。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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