食毒不明。疑わしきは食せず。
キイボガサタケ
毒
写真と文章/新井文彦

画竜点睛を欠く、なんて言葉をたまに聞きますが、
もし、この写真のきのこの傘の真ん中に、
「突起」がなかったとしたら、魅力半減ですよね。
竜の絵の最重要ポイントである睛=瞳に、
間違いなく匹敵すると思います。

きのこの名前は、キイボガサタケ。
もう、見た目そのままです。

鉛筆のように先っぽが尖った柄を、
傘の裏側からくいっと突き刺してみたものの、
ちょっと力を入れて押しすぎちゃった、
みたいな感じの、突起。
この微妙な感じがたまりません。
見れば見るほどかわいい。
男子諸君はきっと、おっぱ、もとい、あれに似ている!
と、良からぬ想像をしていることでしょうねえ……。
それもまたよし(笑)!!

あ、実際に、柄の構造が、
傘を突き刺しているわけじゃありませんよ。
念のため……。

キイボガサタケは、夏から秋にかけて、
森林内の地上から発生します。
全体的に、鮮やか 〜 ちょっとくすんだ黄色。
傘は円錐状で、縁がやや波打ち、条線があります。
高さも、傘の直径も、1〜3cmくらいの、
小さいきのこです。

傘裏のヒダも、もちろん黄色なんですけど、
成熟していくにつれ、徐々に赤みを帯びていきます。
これは、何を隠そう、
イッポンシメジの仲間に共通する特徴なんです。

写真をよく見ると、柄の根本に、
白いものが見えていますが、これ、菌糸です!

毒性については、詳しく解明されてないようですが、
食べると胃腸系の中毒を起こす可能性があるとか。
(無毒、と書いてある図鑑もあります)

しか〜し。

2007年の7月に、愛知県に住む86歳の女性が、
公園を散歩中にキイボガサタケを採取し、
ラーメンに入れて食べたところ、
翌日になって中毒症状が出て、なんと、死亡!!
というニュースがありました。

詳しい状況はよくわからないのですが、
(キイボガサタケが直接の死因かどうかも微妙)
とにかく、きのこを食べるときには、
念には念を入れて調べ、万が一を疑い、
石橋を渡るにも叩き壊すくらい、ご用心あれ。

ちなみに「大」という漢字は、
見た目が不自然というか、何かが足りませんよね?
そう「、」がひとつ足りないと感じませんか?
まさに、画竜点睛を欠いているのではないかと……。
柴犬好きの、きのこ写真家は、
写真の大家にはなれそうもありませんが、
愛犬家にはなれそうな気がします(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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