正解、食毒不明です。
キホウキタケ
毒
写真と文章/新井文彦

9月の初め、オンネトーのほとりで、
きのこらしからぬ形のきのこを発見。
キホウキタケの幼菌です。

ホウキタケの仲間は、
枝分かれしている先っぽが、その名前のとおり、
細長くなっていて箒のような形をしているもの、
そして、全体がずんぐりむっくりのサンゴ形、
大きく二つのタイプがあるのですが、
キホウキタケは、サンゴ形ですね。

じっくり観察してみましょう。
観察するというより、しみじみと、うっとりと、
ついつい見入ってしまうのですが。

白っぽい「本体」が大きく枝分かれしていて、
その「枝」に注目してみると、それがまた分かれ、
その先も、その先も、分岐しています。
部分と全体の自己相似。
幾何学で言うところのフラクタルって奴ですな。

基本になる「本体」があって、そこから、
リサイズされた本体と同じ形のものが、
継ぎ足され継ぎ足され成長していくようなものって、
自然界にはわりと多いような気がします。
木の枝とか、シダの葉っぱとか、雪の結晶とか。
不思議ですよねえ……。

さて。
キホウキタケは、夏の盛りから秋本番まで、
ミズナラなど広葉樹の林地に発生します。
成長すると全体的に黄色っぽくなって、
太く白い柄の根本との対比がそりゃあきれい。
大きなものでは高さ20cm以上にも成長します。
パカっと割ってみると中は真っ白けで、
傷つけたり、古くなったりすると、
やや赤味を帯びてきます。

毒成分はまだ詳しく解明されてないようですが、
誤食すると、嘔吐、下痢など、
胃腸系の中毒を引き起こす場合があるとか。
食用のホウキタケに似ているので、
間違えないよう、くれぐれもご用心を……。

それにしても、
たくさんのきのこを見れば見るほど、
きのこには何のために毒を持っているの?
きのこは何故あんな形をしているの?
などと、
いろいろな疑問が浮かんできます。
キホウキタケなんざ形は変だし毒を持っているし、
不思議のカタマリみたいなものだし。

自然に身をおいて、自然を観察していると、
自然は、ぼくの脳みその限界を遥かに超えた、
超超複雑な世界だということをひしひしと感じます。
何というか、圧倒されっぱなしです。

これこれこうだからこうなった、的な、
原因と結果の因果関係は、もしかしたら、
自然の世界には無縁なのかも、と思ったりするわけで。
(自然科学系オンチですみません)
時間も、環境も、現代なら人間の影響も、何もかもが、
複雑に複雑にからみあって今の自然があるわけですから、
そこに、ひとつの原因に起因する結果を当てはめるのは、
無理じゃないにしろ、相当難しいですよねえ。

きのこは何のために毒を持っているの?
という疑問に対しては、
きのこには何らかの「意思」があって、
もしくは、きのこ以外の何らかの「意思」が働いて、
外敵から身を守れるように毒を身につけたのだ、
という解答よりは、
毒を持っているから仕方ないのだ!
なのだったらなのだ!
という、バカボンのパパ的解答の方が、
真理をついているような気がします、はい(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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