正解、食べられます!
エノキタケ 食
写真と文章/新井文彦

知人の子どもがまだ小さかった頃、
「何何攻撃」をされて閉口した覚えがあります。

「これなあに?」
「夕張メロン」
「夕張メロンってなあに?」
「果物」
「果物ってなあに?」
「植物、の実」
「植物ってなあに?」
「生物」
「生物ってなあに?」
「地球の構成要素」
「地球のごにょにょにょにょってなあに?」
「ごにょにょにょにょって何だ(笑)?」
「じゃあ、地球ってなあに?」
「惑星」
「惑星ってなあに?」
「星」
「星ってなあに?」
「天体」
「天体ってなあに?」
「宇宙に存在するもの」
「宇宙ってなあに?」
「子供電話相談室に電話するか、神さまに聞け!」

ふう……。

子どもは往々にして「何何星人」ですよね(笑)。
怒涛の「何何攻撃」にイライラせず、
わかる限り答えてあげるのがオトナの努めだと思いつつ、
自分の説明能力の低さに唖然としたりして……。

わかっているつもりでわかっていないこと、
実は、けっこうあったりしますよね……。

きのこ的に言えば、今回登場するエノキタケが、
まさにその代表選手だと言えましょう。
エノキタケは、シイタケやマイタケと並んで、
誰もが知っている超がつくほど有名なきのこです。
だけど、天然ものと、人工栽培品が、
これほど違うきのこも他にありません。

この写真を見て「本当にエノキタケ?」
と疑問に思った方も多いと思います。

そう、形も、味も、まったく別モノ。
天然のエノキタケは、お店で見かけるような、
小さくて白っぽくて束状のものではないんです!
コクも旨みも段違い、味も別格です。
(生エノキタケは溶血作用成分含有ゆえ要加熱!)

エノキタケは、晩秋から初春にかけて、
広葉樹の枯木や切株からたくさん発生。
天然きのこが少ない時期の救世主なんです(笑)。
積雪があっても発生することから、
別名「ユキノシタ」なんて呼ばれたりも。

茶褐色系の傘は、ちょっとねばねば。
柄はビロード状で細かい毛が生えており、
その色は、茶色から、時に真っ黒になったりします。
基本的に地味な色をしたきのこなので、
慣れないと同定が難しいかもしれませんが、
けっこう身近な場所に生えています。

きのこ好きとしては、
天然エノキタケの素晴らしさを知ってほしい反面、
あまり知られたくないとも思っているのです(笑)。
だって、みんなが天然エノキタケの魅力を知ったら、
自分の採る分が減っちゃうかもしれないもん……。

同じようなものから差異を見つけることも、
違うものから共通点を見つけることも、
対象を徹底的に観察することが基本ですよね。
きのこに限らず、自然界の様々なものに興味を持って、
わかっていると思っても、もう一度調べてみる。
何何星人に負けないよう、精進したいと存じます。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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