食毒不明。疑わしきは食せず。
フサヒメホウキタケ 食毒不明
写真と文章/新井文彦

森を歩いていて、クモの巣が顔にベタ〜っ。
気持ち悪いやら、腹立たしいやらで、
クモへの怨念が一気に爆発するのですが、
早朝、まだまだ薄暗い中で、
射し始めたばかりの太陽の光に照らされ、
七色に光って見えるクモの巣は、
自然が作り出す、精緻にして大胆な造形。
うっとりするほどきれいなんですね、これが。

クモの巣を、不快にも、美しくも感じられるのは、
フィールドへ出かけて、実体験してこそ。
きのこ、というか、自然に興味がある人は、
万難を排し、万障繰り合わせ、
時間をつくって、ぜひ、野外へお出かけあれ。
そして、五感をフル稼働して自然を「感じて」ください。
見るだけ、聞くだけじゃもったいないですからねえ。

いつも言っておりますが、
きのこが好きになって、きのこを探すために森へ行くと、
「きのこ目」なるものが徐々に強化されていきます。
何もないと思っていた場所ですら、じっくり見ると、
きのこの宝庫だったりするのですが、
きのこに興味がない人は見落としてしまいがち。
人は興味があるものしか見てないんですよね。
あなたは、森で「何目」を得るのでしょうか?

苔むしたマツの倒木に、フサヒメホウキタケ発見。
以前登場したチャホウキタケモドキに似ておりますが、
食毒不明の、食べられないきのこです。

チャホウキタケモドキは、枝分かれしたあと、
すっきりと細く上に伸びています。
一方、フサヒメホウキタケは枝の先がぷくりとしていて、
その周縁部から、豚足のような、
琴柱(ことじ)=和琴の胴の上にたてて弦を支え、
その位置を変えて調律する「人」字形の具=のような、
小さな枝が分かれて伸びています。
全容を見た場合、ごちゃごちゃした感じがしますね。

フサヒメホウキタケは、夏から秋にかけて見られ、
大きいものでは、高さが15cmほどにもなります。
若いうちはごく淡い黄土色で、成長するにつれ、
全体的にだんだん黒ずんでいきます。
触ると、赤褐色に変色。
脆く崩れるわけではなく、肉はしっかりしています。

顕微鏡で胞子を見たときの特徴や、
最近の分子系統分析の結果などは、
ベニタケ系との近縁関係を示しているのだとか。
人は見た目が9割、らしいですが、
きのこは、見た目ではまったくわかりません(笑)。

だから、だからこそ、
見るだけではなく感じることが重要なのではないか!
と、思う今日このごろであります、はい。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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