モエギビョウタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

見てください、この、発生密度!
何の変哲もないトドマツの倒木ですが、
枯れ木に花を咲かせたがごとく、
それはそれは鮮やかな黄色に彩られております。
その名も、モエギビョウタケ。
阿寒の森では、夏から秋にかけて見られる、
正真正銘の、きのこでございます。

写真に写っている黄色いお皿の直径は、
いちばん大きなものでも、わずか5mm程度!
一見、ベタに黄色く塗られているように見えたものが、
無数の小さなきのこだとわかったときの衝撃たるや……。
いやあ、これだから、きのこ観察はやめられません。

お皿の裏側を見てみると、
真ん中に柄が伸びていて、まるで画鋲のよう。
そう、これが、ビョウタケたる名前の所以ですな。

爪、あるいは、ピンセットでつまめば、
採取することは不可能ではないでしょうが、
この小ささゆえ、味を確認できるほど集めるには、
相当の労力を必要とします。
小さ過ぎるきのこの例に漏れず、
おそらく、毒性はないのでしょうが、
このモエギビョウタケも食べるには適しません。

それにしても、どうです、この造形。
森を小宇宙に例える人がいますけど、
これは、まさに、倒木に舞い降りた、黄色い星々。
どうです、天の川を眺めている気分になりませんか?

森で、倒木を眺めつつ、
宇宙137億年の歴史に思いを馳せる……。
とっておきの飲み物とおやつを持参して、
心くゆくまで、瞑想、妄想、空想にふける、
なんて言うのも、森の過ごし方の醍醐味ではないかと。
(ただし、吸血昆虫の妨害がすごいですけど)

この写真を撮影したのは、
阿寒湖から15キロくらい離れた場所にある、
オンネトーという湖のほとり。
森の中の中なので、空気は澄んでいますし、
近くに街がなくて人工光の影響もありません。
雲のない夜は、天の川の中洲!まで見えるほどで、
年に何度もない、まったく風が吹かない日ならば、
湖面に星がくっきりはっきり映り込むほど。
とにかく、ものすご〜い星空が見られます。

と、いうことで、今回は、特別に、
きのことは全然関係ありませんが、
オンネトーの星空も、ご覧にいれましょう!

そうそう、
宇宙137億年の歴史、と書きましたが、
宇宙の年齢は、通説より1億年高齢の138億歳だった、
という研究結果が、2013年3月に、
欧州宇宙機関(ESA)から発表されました。

宇宙の歴史で、1億年の誤差は、
長いのか、短いのか、よくわかりませんけど、
もし、女性の年齢を1歳間違えようものなら、
これはもう、大変なことになります。
ええ、そりゃあ、大変です……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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