ベニカノアシタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

最近、マダニが媒介するウイルスの感染症による、
国内での死亡例が確認され、ニュースになりました。
その病名は「重症熱性血小板減少症候群」。
熱が出て血小板が減る重症の病気ってことですよね。

阿寒の森に限らず、ほぼ、日本全国で、
野外で遊べば、ダニがつく可能性があります。
「藪こぎ」なんぞしなくても、春から秋にかけて、
草木が生い茂っている場所を歩こうものなら、
けっこう高い確率で、ダニ=マダニが付着します。
お散歩大好きな柴犬にも、しばしば付きます。

ただ、多くの人が感染するような病気ではないので、
過度に反応することには問題があると思いますが、
ダニ対策を知っておくことは重要です。
ポイントは、二つ。
野外で肌を露出しないこと。
野外から戻ったら全身をチェックすること。

ダニは皮膚の柔らかいところを狙って齧りつきます。
もし、食いついているのを見つけても、
無闇に引っ張って引き離そうとするのは禁物。
頭部が千切れて皮膚に残る場合が多いんです。

実は、何を隠そう、ぼくは、もう何十回と、
そうだな、年に4〜5回くらいダニに噛まれています!
でも、ダニの頭部が皮膚に残らないよう慎重に、
ピンセットで口先を引っ張って引きはがし、
薬を塗りこんで、はい、オーケー。
それで、今のところ、何の問題もありません。

ただ、一般的には、
ダニが身体に食いついているのを見つけたら、
まず、病院へ行きましょう!

ま、ダニの話はそのくらいにして、阿寒の森へ。
背丈ほどもある笹ヤブを漕ぎ漕ぎ、
(ダニがいること間違いなし!)
森の奥へと進んでいたら、広場のようになっていて、
苔むした素敵な倒木、見〜つけた。
サルノコシカケ系や、チャワンタケ系のきのこ多数。
お〜っと、ベニカノアシタケを発見!

若い個体なので、その色の鮮やかなこと。
時間が経つにつれ、派手な赤系の傘の色は、
周縁部に白い部分が目立ってくるし、
透き通るような柄も濁ってしまいます。
エントロピーが増大するってわけですな。

それより何より、このきのこ、小さいんです。
高さ2〜3cm、傘の直径が5mm前後。
「きのこ目」になっていなければ、
とうてい見つけられないきのこですな。
と、いうことで、極小ゆえの、食不適、です。

カノアシというと「鹿足」という漢字を、
思い浮かべる人がいるかと思いますが、
ベニカノアシタケのカノアシは、なんと「蚊足」。
小さく細いがゆえの、蚊の足、なんでしょうけど、
何で蚊の足なんでしょう?

逆に、きのこに命名するほどに、
蚊の足を蚊の足たらしめているものって、
一体、何なのでしょう(笑)?
それを考えると、眠れなくなっちゃう……。

それにしても、ダニも、蚊も、
人間にとっては不快極まりない生物ですけど、
同じ地球で同時代に生息している生物、という意味では、
人間と甲乙つけるものではありません。
それを考えると、やはり眠れなくなっちゃう……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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