正解、食べられます!
モエギタケ 食
写真と文章/新井文彦

阿寒の森で、地面に這いつくばったりして、
きのこを探し、観察し、写真を撮る……。
実は、これはこれで、なかなか重労働なんです。
ふと、大きく深呼吸をして、空を見上げたとき、
目に入るのは、どこまでも澄み切った青い空、ではなく、
トドマツやエゾマツやダケカンバなどの葉っぱです。

よく見ると、それぞれの木々が、
それぞれの領空を尊重し合っているかのように、
森の空間を見事なくらい共有しています。
つまり、下から見上げたとき、
枝や葉っぱが、周りの樹木と重ならないよう、
整然と区分けされているかのごとく見えるんです。

葉っぱの生え方とか重なり方とか大きさとか形って、
びっくりするほど多様性がありますよね。
常にぐるぐる動き回っている太陽から発せられる光を、
(実際には地球が動いているんですけど!)
それぞれの生育環境に合わせてしっかり捉えて、
より効率的に光合成をするためなのでしょう、きっと。

それはそうと、
モザイク模様というか、パッチワークというか、
ヤマモミジや、ナナカマドなどなど、
太陽の光に透けて見える広葉樹の葉っぱは、
若葉も紅葉も本当に美しくていつまでも見飽きません。

ぼく個人的には、紅葉のときよりも、
春から初夏にかけての葉っぱの色に惹かれます。
阿寒の森の主役は常緑針葉樹なのですが、
一年中葉っぱの色の変化が無いかというと、
まったくそんなことはなくて、
例えば、夏ごろ、トドマツの葉っぱを見ると、
その年に成長した先端部分のみが、若々しい緑色。
そう、いわゆる、萌黄色をしているんです。

夏から秋にかけて見られるモエギタケは、
傘の色が、青緑〜緑色をしているので、
新緑の頃の葉っぱの色のようだ、と言えば、
まあ、そんな風に見えないこともないかな。
春の名を持つ、夏のきのこ(笑)。

傘の縁に白い鱗片が見られますが、
これは、クリタケやチャナメツムタケなど、
他のモエギタケ科のきのこにも見られる特徴です。

ヒダは、最初白く、だんだん褐色に。
柄は、白くて中空で、ぱふぱふした触り心地がします。
一応、毒はなく、食べられるとのことですが、
おいしい、という話は、とんと聞きません、はい。

この写真は、特にねばねばしていますが、
新しいものは傘が粘液に覆われていることが多いです。
ナメコやヌメリササタケなどでお馴染みの、
きのこのぬるぬるねばねばは、一説によると、
害虫からきのこを守るための物質なのだとか。

写真をじっくりとご覧いただくと、
なるほど、きのこによくついている小さな昆虫が、
ぬるぬるで難儀しているようにも見えます。
(虫嫌いの人は、凝視要注意!)

きのこも、木々の葉っぱも、
とにかく、自然は、本当に面白いなあ。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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