ロクショウグサレキン 食不適
写真と文章/新井文彦

その色から緑青を連想したのはよしとして、
後ろにあえて「腐れ」という言葉を付ける意味は?
と、命名者に少し食ってかかりたくなっちゃいます。
ロクショウグサレキン、ですよ、グサレ、キン。

発酵も、腐敗も、要は同じこと。
確かに、それが、ニンゲンにとって、
役に立つか立たないかの違いは大きいですけど、
それは、それ。
日頃から、ニンゲン以外の生物に対して、
尊敬と感謝の念を忘れてはいけないと思うわけです。
「腐れ」という言葉には、どうあろうと、
マイナスイメージがついて回りますよね……。

一分の菌にも五厘の魂!
ん?あれ?

とにかく、わたくし、熱狂的とも言える、
ロクショウグサレキンのファンなのです。

その、色の妙。
青空と碧水が渾然一体となって醸し出すような心地よさ。
その、形の妙。
幽(かそけ)く、朧げで、侘び寂びを成形したかのよう。
などと、いい加減なことを言っておりますが(笑)。

山道や森を、てくてく歩いていると、
でん、と横たわる倒木の一部や、足元に落ちた小枝が、
青色に染まっていたら、それがロクショウグサレキン。

ここ北海道の阿寒湖周辺の森であれば、
夏の終わり頃から、その青く染まった部分に、
耳かきの先っぽのような小さな子実体が発生します。
この青が、実に美しい……。

ちなみに、青くて小さな「お皿」部分の裏側で、
柄が中心についているのがロクショウグサレキン、
中心からずれているのがロクショウグサレキンモドキ、
と、一応、区別されています。

おそらく、毒は、無いものと思われますが、
そのサイズゆえ、たとえ食べられるとしても、
食材として満足できる量を確保することは困難でしょう。

そういえば、本家本元、銅に浮き出る緑青は、
ついジョージ・オーウェルの小説を思い出してしまう、
1984年に、厚生省が正式に「無毒発表」をするまで、
有毒だと思われている節がありましたな。

世の中には、ロクショウグサレキンで、
染物をされている方々がいらっしゃるようで。
インターネットで画像を検索してみると、
染め上がりの妙というか、実に落ち着いた感じの、
優しい青色に染まるんですねえ……。
機会があれば、ぜひ、自分でも、
ロクショウグサレキン染めに挑戦してみたいです。

ロクショウグサレキンの写真をプリントして、
かつ、ロクショウグサレキンで染めたTシャツ。
欲しい!と思いませんか?
巷に増殖しているとウワサの、
きのこ女子の皆さま、ご意見お待ちしております。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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