正解、食べられます!
チャホウキタケモドキ 食
写真と文章/新井文彦

亡くなった祖母が秋田県出身だったので、
子供の頃から、秋田の郷土食に親しんできました。
説明の必要がないほど有名な、稲庭うどん。
大根をナタで大胆に切って漬ける、ナタ漬け。
お正月によく登場した、あま〜い、豆腐カステラ。
などなど。

特に、祖母が好きだったのが、とんぶり。
光沢のある黒緑色で、プッチプチの歯ごたえ。
「畑のキャビア」とか「和製キャビア」などと言われ、
最近ではスーパーマーケットでも見かけますよね。

とんぶりは、特徴的な味がするわけではなく、
納豆や、すりおろした山芋、大根おろしなどに混ぜて、
プチプチした、独特の食感を楽しみます。
で、その、とんぶりとは何ぞや?

正体は、ふわふわっとして、箒みたいな形をした、
ホウキギ(ホウキグサ)の実を加熱加工したものです。

箒みたいなきのこと言えば、
そのものズバリ、ホウキタケですね。
箒と言うより、珊瑚っぽい形をしてますが……。
今回の主役、チャホウキタケモドキは、
数あるホウキタケの仲間の中では、
いちばん箒っぽい形をしてると思います、はい。

夏から秋にかけて、主に、針葉樹の倒木に発生。
高さは10cmに届かないくらいで、
基本的には、名前の通り、黄土色〜茶色系なんですけど、
よく見ると、先っぽの方が緑色を帯びていたりします。

ホウキタケは優秀な食菌として知られていますが、
チャホウキタケモドキの味の評判は、イマイチ。
でも、見つけたらチャレンジしたい、という方は、
きっといらっしゃるんでしょうねえ……。

ただし、ホウキタケの仲間には、
毒きのこもあるので、くれぐれもご注意のほどを。

針葉樹が林立する阿寒の森で、
箒に似たチャホウキタケモドキを見つけると、
「逆さ箒のおまじない」を思い出したりします。
襖の陰や玄関などに、箒を逆さに立てかけ、
(時には上に手ぬぐいをかぶせたりとか)
長居する腰の重い客を掃き出す=退散させる=、
というおまじないですね。

ただ、森で撮影中のきのこ写真家は、
「逆さ箒」があったからといって、
失礼しました、とすごすご退散するわけでもなく、
時には、酔っぱらいよりもしつこく、
長居を決め込むのでありました。

仕事放棄はできませんから……(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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