ズキンタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

きのこは、胞子の作られ方によって、
担子(たんし)菌門と、子嚢(しのう)菌門に、
分けることができます。

担子菌門に属するきのこは、
マツタケやシイタケやイグチの仲間のように、
いかにもきのこっぽい形をしているものが多い一方、
子嚢菌門のきのこは、
チャワンタケのようにお皿の形をしていたり、
テングノメシガイのように棍棒の形をしていたりと、
小さくて、不思議な形をしているものが多いです。

ただし、担子菌門と、子嚢菌門のきのこを、
正確に見極めるためには、目視だけではなく、
顕微鏡を使っての観察や、遺伝子解析が欠かせません。

ズキンタケは、子嚢菌門のきのこ。
9月の声を聞く頃、針葉樹の森、広葉樹の森を問わず、
全国いたるところで見ることができるはずです。
しかしながら、とても小さいので、
慣れていないと、探すのは困難かもしれません。

図鑑によっては、
食べられると書いてあったりするのですが、
多くの説を集約すると、食不適。
たとえ、無毒で、食べられるとしても、
ほとんど食用の価値はないようです。

ズキンタケには、ご覧のように、
きのこの代名詞とも言える、傘がありません。
「都会では〜」という歌い出しの、
井上陽水の名曲を思い出しますねえ……(笑)。
ぶつぶつだらけのずんぐりした柄の上には、
頭巾だか脳ミソだか、変な形のものが乗っています。

頭部の色は、黄土色〜緑色。
個体ごとの変化が割合大きいようです。
形は、波打つようにうねうねとしていて、
下側が、内に向かって巻き込まれている感じ。
頭部は、子嚢盤と呼ばれていて、
成熟すると、表面からざわっと胞子を放出します。
担子菌門の傘があるきのこのように、
裏側から胞子を放出するわけではないんです。
きのこ、奥が深いでしょ?

きのこ好きとしては、
ナメコとかシメジとか、ノーマルなきのこよりも、
ズキンタケをはじめとする、ちょっと風変わりな、
子嚢菌門系のきのこに、つい惹かれてしまうわけで。

いずれにしても、
こんな小さくて愛らしいきのこを見つけたら、
キュートなトップに、ズキンドキン!です(笑)。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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