おしい!食べられるんです!
タマチョレイタケ 食
写真と文章/新井文彦

思い出す度に、悔しさが蘇ります。
なぜ、すぐに名前を調べなかったのかと。
実は、この写真を撮影したのは、2010年。
名前を調べるのが面倒くさかったので、
そのままほったらかしにしておいて、
写真を整理がてら、図鑑を開いたのは、
次の年が明けて、しばらくしてから。

タマチョレイタケ、と言います。
お味はともかく、一応、食べられるきのこです。

実は、このきのこの最大の特徴は、
地上に顔を出している子実体ではなく、
地面の下にあるのです、これが。
菌糸が、土壌を硬く固めて、塊をつくるんです。
金の塊だったら金塊ですが、菌の塊なので菌塊(笑)。
きのこが生えている地面を掘り起こすと、
まさに、猪苓(ちょれい)そのもの、という、
直径15cm前後の立派な塊が発掘できるというわけ。
ああ、金塊、じゃない、菌塊、掘りたかった!

あれ、フンフン、と読み流しちゃいましたね。
タマチョレイタケの、チョレイ(=猪苓)が、
何を意味するのか、まだ説明してませんけど。
うんちょっと早とちりしちゃった、という人、
多いかもしれませんね(笑)。

猪苓とは、何をかくそう、イノシシの糞のこと。
名前の由来は、玉のような猪の苓、ですな。

きのこ好きとしては、それがたとえ、
イノシシの糞のようであろうが、
地中の菌塊なるものをぐりぐりと掘り出して、
自分の手の平に置いてその存在をしっかり確かめたい、
と切に願うものなのです(笑)。
その日に名前を調べておけば、翌日掘りに行けたのに!
クドいですけど、ああ、掘りたかった!
惜しい機会を逃しちゃいました。

図鑑を調べると、タマチョレイタケには、
木から生えるタイプもあるようで、
この写真のタマチョレイタケがまさにそれ。
土壌から木の中を突っ切って菌糸が伸びて、
子実体が生えているのだとか。
すげえなあ。

ちなみに「猪苓」という漢方薬があります。
これは、我がタマチョレイタケの菌塊ではなく、
かといって、本物のイノシシの糞でもなく(笑)、
チョレイマイタケ、という、
子実体がマイタケにそっくりなきのこの菌塊のこと。
利尿作用や、抗腫瘍作用があるとされ、
解熱、止渇、利尿の薬として用いられるようです。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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