チシオタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

やわ肌の
あつき血汐にふれも見で
さびしからずや道を説く君

さ、今回は、いきなり、色っぽい、というか、
ど真ん中ストレートな感情の発露からスタートです。
与謝野晶子「みだれ髪」に収録されている、
有名な歌ですね。

「血汐(潮)」は、童謡でも歌われている通り、
手のひらを太陽にすかしたときに見える、
真っ赤に流れる血液、という意味もありますが、
激しい感情や情熱を言い表す場合もあります。
その両方を彷彿させるあたり、さすが、
与謝野晶子は、只者ではありません。

その若き晶子と、妻子ある与謝野鉄幹との、
山あり谷ありの熱く激しい恋愛模様は、
もし、あるならば、別の機会に語ることにして、
無粋ながら、きのこの話に移行します(笑)。
そう、チシオタケ、です。

ナイフなど刃物で傘を傷つけてみると、
まるで血液のような赤い液体が、たらり、たらり。
チャ、チャ、チャ〜ン、という、
ギターコードで言うなら、ディミニッシュ系の、
火曜サスペンス劇場風サウンドロゴが、
脳内に鳴り響いたりするわけです。

実は、この、ほぼ日刊イトイ新聞内に、
チシオタケにぶすりとナイフを突き刺すシーンが!
「みんなで行った、阿寒きのこの森」
というコンテンツでご覧いただけます。

で、分泌される真っ赤な液体は、
手につくとなかなか落ちないのですが、
水で洗うと、さ〜っと流れ落ちます。
チシオタケが出す液体は赤〜暗赤色、
仲間のアカチシオタケはやや橙色です。

もし、枯木の上にチシオタケの群落を見つけたら、
数日してからまた見に行ってみてください。
盛りを過ぎたチシオタケには、なぜか、
タケハリカビという細い毛のようなカビが、
寄生していることが多いのです。

ね、まるでチシオタケに毛が生えたようでしょ。
ところで、この写真、なんかに似てません?
そう、トッポ・ジージョ!

まあ、いずれにしても、チシオタケは、
食すというよりは、鑑賞するに限ります。

ちなみに、若い女性たちの間では、ときおり、
「よさのる」という言葉が使われたりするのだとか。
情熱的に相手を誘う、という意味ではなく、
単に、髪型が乱れていることのようです。
だったら、妙齢の美しき女性が、
よさのってくれなくても別にいいや……。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
感想をおくる とじる ツイートする