おしい!食べられるんです!
オオフクロタケ 食
写真と文章/新井文彦

図鑑によると、オオフクロタケは、
肥沃な場所に生える、とあります。
「肥沃(ひよく)」という言葉で、
ふと思い出すのは、社会(世界史)の教科書。
人類史初期に現れた文明の共通点は、
大きな川の流域に位置し、
温暖な気候と肥沃な土地に恵れていた……と。
というか、我が人生で「肥沃」とか「沃土」とか、
「沃」という字とお目にかかったのは、
きのこ図鑑と社会の教科書くらいです(笑)。

ちなみに、ぼくの世代では、
中学校だったか高校だったか忘れましたが、
メソポタミア、エジプト、インダス、黄河を、
文明の祖であるところの「世界4大文明」と、
習ったような記憶があるのですが、実は、
この概念は、東アジアの一部の地域を除き、
世界ではほとんど受け入れられてないのだとか。
(今の教科書の記述はどうなのでしょう?)
確かに、世界各国多岐にわたる文明の源を、
たった4つに限定してしまうのは無理があるような。

ま、それはともかく、
オオフクロタケにとっての、
また、きのこにとっての「肥沃」とは何ぞや?
経験上、オオフクロタケは、
徹底的に分解されてズダズダになり、
もう土壌だか木だか見分けがつかないくらいだけど、
でも、よくよく見るとやっぱり木の名残があるかも、
という倒木の上、または、その近くで見つかります。

きのこが栄養をとる方法は、
生きている動植物菌類に取り付く「寄生」、
死んでしまった生物に取り付く「腐生」、
生きている木々と栄養をやり取りする「共生」、
と、主に3つありますが、
オオフクロタケの場合は、生えている場所からして、
このうちの「腐生」、つまり、
枯木や倒木など、死んでしまった木から、
栄養を得ているのだと考えられますね。
湿っていて、木とも土ともつかぬものは、
菌類や植物にとって、いい栄養になりそうです。

オオフクロタケは、成長すると、
傘の直径が10センチにもなる、立派なきのこ。
傘には粘性があり、柄の根本に、ツボと呼ばれる、
袋状になった外皮膜の名残が見られます。
これが、名前の由来。

毒きのこが連なるテングタケ科に似てますが、
こちらはウラベニガサ科で、食べることができます。
お味は、これが、歯ごたえもあって、美味、とのこと。
仲間のフクロタケは、栽培物が流通し、
中華料理などでよく使われているようです。

ですから、見つけたら、ぜひお試しを、
と言いたいところなのですが、
前述したように、テングタケの仲間は、
毒きのこ勢揃いの、大見本市。
はっきりと識別できるようになるまでは、
ゆめゆめ食すべからず。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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