マンネンタケ 食不適
写真と文章/新井文彦

蒸し暑さと、吸血昆虫の波状攻撃。
夏の森は、心地いい、というよりも、
不快さを感じることが多いかもしれません。

しかし、しかし、
生命の香りに満ちた緑色の風がそよと吹けば、
不快な気分をすっかり振り払ってくれるし、
きのこ目センサーが、ぴぴぴ、と反応して、
特別なきのこを見つけようものなら、もう。
やっぱり、森は、いいなあ、ということに。

空気の海を泳いでいるような、
そんな、雨上がりの、夏の日。
森を横切る小さな川の流れで顔を洗っていると、
左目の端の方で、何かをキャッチ。
一面の緑の中に、真っ赤な物体……。

ざぶざぶと川の中を歩き、近づいてみると、
苔むした広葉樹の倒木からにょきっと生えるは、
中国四千年の歴史が誇る万能薬の霊芝(れいし)こと、
マンネンタケじゃあ、ありませんか。

木漏れ日にきらきら光る、フェラーリのような赤。
これほど高級感あふれる色つやを持ったきのこが、
ほかにあったかは(「かは」は反語)!

漢方の本場、お隣の中国で、霊芝、と言えば、
きのこの国家主席、薬の共産党書記長。
不眠、神経衰弱、喘息から、癌にいたるまで、
病気なら何でもお任せ、不老不死の秘薬と称されます。
「白髪三千丈」なんて表現をするお国柄ですけど。

ここ日本では、個体や採取場所によって、
品質にばらつきがあるという理由により、
医薬品としては認定されてないようです。
ま、人工栽培方法が確立されているので、
健康食品として、けっこう商品化されてますが。

民間薬としてのマンネンタケは、
固くてとても食べるどころではないので、
煎じて飲んだり、薬用酒としてして利用されてます。

この写真を撮影してから、ひと月くらいして、
見つけた場所へもう一度行ってみると、
虫に食われ、光沢を失い、ふかふかになり、
過去の栄光よいずこへ?というくらいぼろぼろに。
そう、マンネンタケは、
年々成長するサルノコシカケの仲間とは違い、
年を越せない、一年生のきのこなんです。

じゃあ、なぜ、マンネンタケ?
きらきらぴかぴか状態のときに採取すると、
色は褪せるものの、腐らずにずっと保存できるから。
ぼくの仕事部屋の本箱のすみっこにも、
マンネンタケ、しっかりと飾ってあります。

言わずもがな、ですが、
マンネンタケ=霊芝を、お薬として服用する場合は、
医師や薬剤師に必ず相談してくださいね。

※このコンテンツでは、 きのこの食毒に触れてますが、 実際に食べられるかどうかを判断する場合には、 必ず専門家にご相談ください。
 
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