ホーメイ、大流行か?!
奇跡の声をもつ男、
ボロット・バイルシェフさんが来日します!

いよいよ本番直前、
ボロットさんは楽しんでいます!


ほぼにちわ。
「アルタイ文化研究会・会長」たんじふみひこです。
普段はアノニマ・スタジオという本のレーベルで
編集者をしてますが
『ボロット・バイルシェフ
  in JAPAN 2004』コンサートでは運営だけでなく
プロモーションやマネージメントのお仕事もしています。
「会長」とはつまり「よろず方」という位置ですね。
よく考えれば。

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いよいよコンサートの前日、
今日は神楽坂のスタジオをお借りしてのリハーサルでした。
ボロットさん、巻上さんはすでにおなじみですが、
今日初顔合わせになるのが
パーカションの佐藤Massa正治さん。
佐藤さんの楽器車
(実用一辺倒のかわいい軽のワゴンです)から
次々と太鼓やらなにやらの、得体の知れない
鳴り物が運び出されます。
ボロットさんはそのひとつひとつを興味深そうに眺め、
おそるおそる手に取ります。
でも、その手つきが「堂に入っている」。
たとえばドラムをたたく
マレットをもったその手を見ただけで、
佐藤さんの口から「うまそうだねえ」との感想がもれます。
そして確かに、ボロットさんのひとふりで、
楽器がポーンと気持ちよさそうに鳴りだします。
天性の才能なのでしょうが、
その楽器の「鳴り方」の勘を
瞬時につかんでしまうようです。

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ボロットさんは最近とくに気に入っているという
持参のインディアンフルートを取り出して吹き出します。
その柔らかな響きを聴いているうちに、
今度は巻上さんが「ショール」と呼ばれる縦笛などを
袋から次々と取り出します。
そして今度は笛の吹き比べがはじまります。
「この笛はいいね。いい木を使っている」
ボロットさんは巻上さんの笛を鳴らしながら、
どんどん真剣な表情になってゆきます。
そして、いつの間にかセッションがはじまっていました。
まるで小さなこどもが自慢のおもちゃを見せ合ううちに、
いつしか真剣に遊びはじめるように。

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今日初めてボロットさんと会った佐藤さんは
最初のうちこそ間合いをはかっている様子でしたが、
ものの1分もたたないうちに、ふたりの呼吸をつかんで
どんどんセッションに入ってゆきます。

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ボロットさんは笛をトプシュールに持ち替え、
弦をつま弾いてリズムをあたえます。
そのリズムから佐藤さんは、
揺らぎながらも伸び縮みする
独特のビートを引き出し、
そこに巻上さんの「テルミン」! 
その言語化不可能な音に
ボロットさんの「カイ」の重低音が重なり……。

リハーサルは、すでに真剣勝負です。

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ボロットさんのトプシュールが、
いままでと雰囲気の違うリズムを刻みはじめました。
「ツンドラの歌」のさわりです。
昨年のコンサートではアンコールに演奏され、
1300人の涙を絞った曲です。
ボロットさんが巻上さんに目くばせします。
巻上さんはゆっくりと目を閉じて、
日本語で歌い始めました。

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「ツンドラをひとり、
 歌を道連れに
 燃えよ一番星、
 君に会うために
 ルィールィールィールラー
 ルィールィールィールラー
 燃えよ一番星、
 君に会うために」

 そこにボロットさんの澄んだ高音の歌声がかさなり、
 いつしか歌詞はロシア語になっています。

最後は口琴(こうきん)のデュオです。
口琴とは、小さな金属の板を口元でふるわせて、
その振動を口腔や口蓋、
胸板から全身までを共鳴板として響かせる楽器です。
このコーナーを読んでくださっている人なら
きっと聴いたことがあると思うのですが
「ビヨ〜ンビヨ〜ン」という音がする、あれです。
ボロットさんはその口琴の超絶技巧を持っています。
巻上さんも超絶に負けじと次々と荒技を繰り出します。
これはもう、デュオではなくバトルですね。

あっという間にリハーサルの3時間は終わりました。
時間がきたから、というわけではなく、
やるべきことを十分にやったから、という終わり方です。
誰ともなく「ああ、楽しかった」との言葉がもれました。

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巻上さんは、数年前にオーストリアのモルンという
小さな街でひらかれた
「世界口琴フェスティヴァル」で、
(というか、そんなもんもがあるんですね)
はじめてボロットさんにあいました。
その演奏があまりにもすばらしく、
その足で楽屋におもむいて
「いっしょに演奏しましょう!」
と声をかけて、友情はそれ以来のものです。
ふたりが演奏している様子を見ていると、
そばにいるこちらのほうが嬉しくなるような、
信頼関係で結ばれていることがよくわかります。
こうかくと、どうもウソっぽいですよね。
言い換えれば、お互いの能力を
認めて尊重しあっている。
大人の関係です。
その大人たちが、新しいおもちゃを自慢しあうように
自分の楽器や新しい奏法を披露しあっている様は、
もちろん「すごい」けれど、どこか「かわいい」。
(公演は18日、19日ですよ!)

アルタイに旅したとき、ひとりの男と出会いました。
名前はアルジャン。
アルタイの首都ゴルノアルタイスクから
一番近い飛行場がある都市ノボシビルスクまで、
ボロットさんがわざわざ出迎えてくれたのですが、
その車を運転してくれていたのがアルジャンでした。
(なんと、片道8時間の道のり、約800キロ!)

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はじめはボロットさんに雇われた
ドライバーかと思っていたぼくたちですが、
アルジャンの人柄に触れるうちに
彼のことがどんどん好きになっていきました。
ランディさんは、その時のことをこう書いています

アルジャンさんは、とても無口で落ち着いた男だった。
彼もまた、男の品性と父性と
抑制された野生と適切な理性、
そしてユーモアをもっていた。
とにかく落ち着いていた。物事に動じない。
いつも静かな動物のように世界をじっと観察していた。

そして、短い受け答えのなかにユーモアがあった。
優しかった。絶対に押し付けをしなかった。
節度ある自己主張をした。そして強かった。
(中略)
でも、最も感銘を受けたのは、
ボロットさんとアルジャンさんの人間性だった。
彼らは「他者と時間をわかちあう」ことを知っていた。
「忙しい」ということを一切、口にしない。
共にその場にいることを心から楽しんでいた。
「アルジャン、こんなに私たちといっしょにいて、
 ご家族は寂しくない?」
「大丈夫だよ。友達が来ているときは
 あたりまえのことだよ」

そのアルジャンとボロットさんは、幼なじみだそうです。
「小さいころから、それこそこいつがおねしょばかりして
 おこられているころから知っているからね」
ボロットさんはいつものように
まぶしそうに笑うのですが、
そのふたりの関係も、まさに
「それぞれの強さ、すばらしさを尊重しあう」
関係に思えました。

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アルタイを離れる時、
8時間の道のりを車で飛ばして、
ボロットさんとアルジャンが
ぼくたちを飛行場まで送ってくれました。
パスポートコントロールのゲートの前、
どうしても別れがたいぼくたちは、
口々に別れの言葉をつぶやいたり
抱き合ったりして、
どうにかしてこの旅で得たものを
つなぎ止めようと必死でした。
そのときのアルジャンの表情が、
目が忘れられません。
彼の目はこう語っていました。
「もちろん、また会えるかもしれない。
 また会いたい。
 でも、今、この場所でいっしょにいることは、
 もうできないんだよ」
その何かをあきらめたような、
でも同じ強さで再会を信じているような静かな瞳。

そのアルジャンの訃報が届いたのは今年の2月でした。
不慮の交通事故だったそうです。
彼の名前アルジャンは「聖なる泉」という意味でした。
あれから2年、自分は「他者と時間をわかちあう」
ことをしてこれただろうか。
そんなことを思いながら
準備してきたコンサートです。


今回、11月18、19日に行なわれる
東京公演は飯田橋のトッパンホールを
会場に選びました。
http://www.toppanhall.com/jp/index.html
このホールは座席数400人の小さなホールで、
基本的にクラシック専用です。
特殊な構造を持ち、地下鉄や高速道路など
近隣の騒音や振動を限りなくゼロに近づけ、
演奏者の息づかいまでも
観客に伝えることに成功したホールです。
ボロットさんのめくるめく倍音の世界、
口琴のささやき、トプショールの弦のこすれまでを、
じっくりとお楽しみいただけます。
※東京公演で当日券をお求めの方は、窓口で
 「『ほぼ日』見ましたよ」とおっしゃっていただければ、
 前売り料金で当日券をお売りいたします!
 が、残り席あとわずか! 売り切れごめんです!



Information


「宇宙の命脈」ボロット・バイルシェフ
  in JAPAN 2004


アルタイの山々に木霊する
驚異の声帯がもたらす宇宙の音楽。
東京公演はクラシック専用のトッパンホールを舞台に
微細な倍音の彩りを心ゆくまであじわってください。
インフォメーションサイトはこちら。
http://www.makigami.com/bolot/

東京公演※終了しました。
11月18日(木)19日(金)
開場:18:30 開演19:00
会場:トッパンホール(東京・飯田橋)
出演:ボロット・バイルシェフ
   (カイ、トプシュール、ショール、口琴)
   巻上公一(ヴォイス、口琴、テルミン)
   佐藤正治(パーカッション、ヴォイス)
トークセッション:
   田口ランディ(作家)、
   菅靖彦(翻訳家、トランスパーソナル学会副会長)

チケット:前売り5,500円 当日6,000円 
     学割5,000円(直販のみ)全席指定
取り扱い:青い鳥創業
    (03-3486-7727 平日10〜18時)
     チケットぴあ
    (Pコード184-938 tel.0570-02-9999
     または03-5237-9966)

富士吉田公演※終了しました。
11月20日(土)
会場:富士吉田ナノリウム(山梨県富士吉田市)
http://www.fujigoko.co.jp/Events/yoshida/bolot/
問合わせ+チケット:tel.0555-24-2938

京都公演※終了しました。
11月23日(火)
会場:くろ谷 永運院(京都市左京区)
http://www.kbic.ne.jp/%7Eviewboo/mai2-69/
e-mail:maimai-69@k9.dion.ne.jp

沖縄公演
11月28日(日)十六夜(いざよい)
会場:読谷村 座喜味城跡(ざきみぐすく)
http://www.karacara.com/text/bolot/
問い合わせ カラカラ編集部 098-857-8401

2004-11-18-THU

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