ホーメイ、大流行か?!
奇跡の声をもつ男、
ボロット・バイルシェフさんが来日します!

アルタイの、あまりに長くて厳しい冬の話です。

ほぼにちわ。
「アルタイ文化研究会・会長」たんじふみひこです。
普段はアノニマ・スタジオという本のレーベルで
編集者をしてますが
『ボロット・バイルシェフ
  in JAPAN 2004』コンサートでは運営だけでなく
プロモーションのお仕事もしています。

今日はコンサートのプロモーションをかねて、
ボロットさんはJ-WAVEの番組収録でした。
クリス智子さんの「BOOM TOWN」
オンエアは18日の朝9時40分ころからです。
もちろんボロットさんは「ナマ喉歌」を披露、
J-WAVEの中にボロットさんの重低音が響きました。

歌がはじまったとたんに、エンジニアの方が慌てて
フェーダーを下げていました。
スタジオ内に衝撃が走った一瞬でした。
「普通歌や声は『耳』で聞くけれど、
 ボロットさんの声は、内臓で聞いている感じですね」
クリスさんの感想は、
その場にいた全員の感想だったと思います。
オンエア、ぜひ聞いてくださいね。
(あ、もちろんコンサートも)


さて、今日はアルタイの冬の過ごし方と、
アルタイ人たちのものの考え方を
少しだけお伝えしようと思います。

月曜日から、東京は急に寒くなりましたよね。
ですが、今朝のボロットさんは、
「うん、すごしやすい気候だね」と言って
顔をくしゃくしゃっとほころばせていました。
確かに日射しは明るいけれど、
北風が寒いよ、ボロットさん!
(余談ですが、ぼくは昨夜から
 喉が痛くて声がかすれています。
 こういうときに喉歌のまねって、
 やりやすいんですよ。
 皆さんもぜひ試してみてください)

アルタイはすでに最高気温がマイナス。
「この間までは結構寒かったけど、ぼくが出発するころは
 少し温かくてマイナス13度くらいだった」
って! さすがシベリアの国です。

(クリックすると大きくなります。)

冬は雪に閉ざされるアルタイ。
マイナス40度にもなるという冬のアルタイ。
いったい彼らはその冬のあいだ、
どんな暮らしをしているのでしょう?
2002年の夏にアルタイに行きました。
巻上公一さん、田口ランディさん、
川内倫子さんと通訳の上田洋子さんといっしょでした。
(今回ご紹介しているのはその時の写真です)
その旅のあいだじゅう、
いろんなことをおしゃべりしました。
不思議なもので、ボロットさんの話は
ビジュアルとして「スコーン」と入ってきます。
これはもちろん通訳の上田さんの
力量によるところも大きいのですが、
それにしても「喚起力」が強い言葉を話す人です。
単語の数は少なくて、しかし情報量はものすごく多い。

これはボロットさんが歌う「カイ」と同じですね。
もしかすると、ボロットの声、
言葉に何か秘密があるのではないか、
と漠然と考えていました。

つい最近、北山耕平さんという
先住民の世界に詳しい方とお話しする機会がありました。
彼はいろいろな部族の
「シャーマン」や「長老」と呼ばれる人たちと、
たくさんの対話を重ねてきたそうです。
その中である時、彼らが話す言葉の情報量について
気がついたのだそうです。
話される単語の数に比べて、
情報量が極端に多い、と。
たとえば同じ英語を使っていたとしても、
ある種の人たちが話す英語は、
かなりの情報をストレートに伝えてくるのだそうです。

これです!

この話をうかがったとき、ぼくはボロットさんが
シャーマンであることを確信しました。
ご本人は自分のことをシャーマンではない、といいます。
しかし、ボロットさんの存在、その発する声は、
やはりシャーマン的な要素を
多く持っているように思えてしかたありません。

(クリックすると大きくなります。)

ちなみに、J-WAVEのインタビューの冒頭で流される曲は
シャーマンのことをうたった歌です。
アルタイ語でシャーマンのことを「ウマイ」といいます。
旅の間、ぼくらがあまりにおいしい
アルタイの野菜を食べるたびに
口々に「うまい!」と叫ぶのを聞いて、
そのたびごとにボロットさんは
まぶしいような笑顔を向けたものでした。

あ、脱線が過ぎました。
では、アルタイの冬のエピソードでひとつだけ、
とても印象深かったものを。
その旅の途中、アルタイの
長くて厳しい冬のことが話題になりました。
マイナス40度、8か月は雪がなくならない大地。
そんな場所で、この人たちはいったい何をして
暮らしているんだろう?
ぼくはほんとうに何気なく、ボロットさんにたずねました。
「冬には何をしているんですか?」
以下は、そのあまりに単純なぼくの質問に対する
ボロットさんの答えです。

(クリックすると大きくなります。)

アルタイの冬は、長くて厳しい。
地表はすべて凍り付き、
いきものの気配を探すことすら難しい。
一面真っ白な世界。
しかし、その白く凍った時間があるから、
私たちアルタイ人は自分たちの世界を守っていけるのだ。
厳しい冬が私たちの思想を作っているといってもいい。
冬、あたりが雪に覆われると、
私は馬に乗って平原に出る。
雪の中をしばらく走ると、
見渡す限り人間は自分しかいない場所に出る。
そこには私が大好きな一本の木がある。
私は馬の鞍をはずし、彼を自由にしてやる。
私も馬から自由になって、その木の下に座りこむ。
そして、じっと自分のことを考えるんだ。
何時間も何時間も。
いままでのこと、これからのこと、
遠い昔の祖先たちのこと、
これから私たちの次に続くであろう子ども達のこと。
世界のこと、宇宙のこと。
とにかくじっと座って、思いをめぐらせるのだ。
ときにはトプシュール(二弦の楽器)をつま弾いて
カイを歌うこともある。
そうやっているうちに、馬が戻ってくる。
充分自由を味わった馬が、私を迎えに来る。
そうして、私は家に帰る。
これが私たちの冬の過ごし方だ。
みなそれぞれ、やり方は違っても
長い冬に自分と深く対話する時間を持つ。
これが私たちの冬の過ごし方だ。

ボロットさんの歌には、その長い冬の
静謐な時間が流れています。


今回、11月18、19日に行なわれる
東京公演は飯田橋のトッパンホールを
会場に選びました。
http://www.toppanhall.com/jp/index.html
このホールは座席数400人の小さなホールで、
基本的にクラシック専用です。
特殊な構造を持ち、地下鉄や高速道路など
近隣の騒音や振動を限りなくゼロに近づけ、
演奏者の息づかいまでも
観客に伝えることに成功したホールです。
ボロットさんのめくるめく倍音の世界、
口琴のささやき、トプショールの弦のこすれまでを、
じっくりとお楽しみいただけます。
※東京公演で当日券をお求めの方は、窓口で
 「『ほぼ日』見ましたよ」とおっしゃっていただければ、
 前売り料金で当日券をお売りいたします!
 チケットが残りわずかになってきました。
 確実にご覧いただくためには、
 チケット窓口までお電話で
 ご予約いただくことをおすすめいたします。
 電話03-3486-7727(青い鳥創業



Information


「宇宙の命脈」ボロット・バイルシェフ
  in JAPAN 2004


アルタイの山々に木霊する
驚異の声帯がもたらす宇宙の音楽。
東京公演はクラシック専用のトッパンホールを舞台に
微細な倍音の彩りを心ゆくまであじわってください。
インフォメーションサイトはこちら。
http://www.makigami.com/bolot/

東京公演※終了しました。
11月18日(木)19日(金)
開場:18:30 開演19:00
会場:トッパンホール(東京・飯田橋)
出演:ボロット・バイルシェフ
   (カイ、トプシュール、ショール、口琴)
   巻上公一(ヴォイス、口琴、テルミン)
   佐藤正治(パーカッション、ヴォイス)
トークセッション:
   田口ランディ(作家)、
   菅靖彦(翻訳家、トランスパーソナル学会副会長)

チケット:前売り5,500円 当日6,000円 
     学割5,000円(直販のみ)全席指定
取り扱い:青い鳥創業
    (03-3486-7727 平日10〜18時)
     チケットぴあ
    (Pコード184-938 tel.0570-02-9999
     または03-5237-9966)

富士吉田公演※終了しました。
11月20日(土)
会場:富士吉田ナノリウム(山梨県富士吉田市)
http://www.fujigoko.co.jp/Events/yoshida/bolot/
問合わせ+チケット:tel.0555-24-2938

京都公演※終了しました。
11月23日(火)
会場:くろ谷 永運院(京都市左京区)
http://www.kbic.ne.jp/%7Eviewboo/mai2-69/
e-mail:maimai-69@k9.dion.ne.jp

沖縄公演
11月28日(日)十六夜(いざよい)
会場:読谷村 座喜味城跡(ざきみぐすく)
http://www.karacara.com/text/bolot/
問い合わせ カラカラ編集部 098-857-8401

2004-11-17-WED

このページへの感想は、
メールの表題に「ホーメイ」と書いて
postman@1101.comに送ってね!

BACK
戻る