カワイイもの好きな人々。
(ただし、おじさんの部)

4月下旬のとある土曜日。
九州熊本、阿蘇山ふもとのテーマパーク、
「カドリー・ドミニオン」に僕はいました。

宮沢厚さん(45)が、
「気をつけてくださいよー」
と笑顔で僕に注意をうながします。
次の瞬間、高い枝にぶらさがるその生命体は、
両手を広げて待つ山下の胸をめがけて
いきおいよくダイブしたのでありました。


第38回
パンくんとジェームズはカワイイ。

山下 うっわあ!!(しっかと受け止める)
宮沢 だ、大丈夫ですか?
山下 は、はい、平気です。
‥‥わ、わーん、パンくーん!
宮沢 (笑)そうやってですね、
気に入った人にはパッと抱きつくんですよ。
山下 ようやく、ようやくです(抱っこしながら)。
朝からずっと抱っこをさせてほしくて
パンくんの近くをウロウロしてたんですが
ぜんぜん僕のところに来てくれなくて‥‥
ああ、うれしいなあ‥‥。
嫌われたのだと思ってました。
(パンくんを降ろす)ありがとう、パンくん。
宮沢 ジェームズも来てますよ。
山下 え? ああ、ジェームズぅ(笑)。
ジェー はっ、はっ、はっ、ふがっ、はっ、はっ‥‥。
宮沢 パンは気に入った人に抱きつきますが、
ジェームズはとにかく人間が好きなんで、
だれにでもドーンと。
山下 はい、ドーンと(笑)。
もう、きょうは何度も来てくれました。
な、ジェームズ。
ジェー (ピクッと反応)‥‥‥‥。
山下 ‥‥おいで!
ジェー んがっ!(ダッシュ)。
山下 わわわ!(ドーンと受け止める)
ジェー ふが、べろべろ、ふぐわあ、べろべろ‥‥。
山下 よーしよし(なめられつつ)そうかそうか!
‥‥宮沢さん(なめられつつ)、
飛行機に乗ってこの子たちに会いにきて、
こうしてなめられて歓迎されたり、
パンくんには抱きしめてもらったり‥‥。
ほんとにもう(なめられつつ)か、感激です!

時はさかのぼり4月初旬のことです。
月刊テレビ情報誌「テレビジャパン」さんから
「カワイイどうぶつに会いにいって、
 その様子を記事にしてみませんか。
 ほぼ日さんでの連載のような感じで」
というお申し出をいただきました。
なんてすばらしいお申し出でしょう。
行ってまいりました。熊本まで。
取材は無事終了し、すでに記事もまとめ、
ただいまこちらで読むことができます。
5/15発売の6月号、
関東、中部、関西地域で発売中です。ぜひ。

熊本阿蘇まではるばる会いにいったのは、
チンパンジーのパンくん(3)と
ブルドッグのジェームズ(1)でした。
日本テレビの「天才! 志村どうぶつ園」
のコーナー「パン&ジェームズのおつかい」
に出てくる、あのふたりといえば、
ご存知のかたも多いことでしょう。
一生懸命のおつかい姿がカワイイ、人気コンビ。
おつかいの様子はこんな感じです。

実物は‥‥テレビ以上のかわいさでした。
あまりにもかわいかったので、
「テレビジャパン」未掲載の画像と共に
こちらでもご紹介しようと山下、
強く思い立った次第でございます。

さて、
アニマルトレーナーの宮沢厚さん(既婚)が
よっこいしょっと芝生の上に腰をおろします。
たちまち膝の上に来るパン&ジェームズ。
宮沢さんは、トレーナーではなく、
「父の目」で、ふたりを見つめています。

山下 はあ〜、ほんとに家族のようです。
宮沢 ええ、僕も動物だと思ってませんから。
息子たちですよね。
山下 こんなことを聞くのは野暮かもしれませんが、
宮沢さんはどんなときに、この子たちを
かわいいなあと思いますか?
宮沢 それはもう、「いつも」です。
山下 つねに! ああ、それはそうですよね。
息子なのですものね。
‥‥しかし、それにしても仲のいい兄弟です。
ジェームズ、べろべろなめてますし。
宮沢 (笑)犬猿の仲ではないですよね。
でも、パンはどんな犬でも
好きなわけじゃないんですよ。
ジェームズだけなんです。
うちにはもう一頭ブルドッグがいますけど、
それが出てくるとパンは逃げますから。
山下 そうなんですか‥‥。
それに、ふたりともほんとにイイ子で。
さきほどスチール撮影に
同行させていただいたのですが、
これですとか(デジカメの画像を見せる)。
宮沢 (笑)よく撮れてますね。
山下 ポーズをしてカメラに目線をくれるし、
もちろん逃げないし‥‥。
やはりショーのための厳しい訓練を通じて
こんなふうに素直になるのですか?
宮沢 いやいや、そんなことはないんですよ。
特別な訓練はなにもしていないのです。
山下 なにも、ですか。
宮沢 ショーのトレーニングは遊ぶだけですね。
僕がこの子たちと遊ぶ、それだけなんです。
目的のある訓練をしない。
たとえば竹馬や一輪車に乗れるよう
がんばらせたりはしないんです。
僕とひたすら遊んでいるときに、
何かおもしろい仕草をしたら、それをホメて、
かためて、まわりに演出を加えて、
結果的にショーにしてお客さんにお見せする。
それだけなんですよ。
山下 なるほど‥‥。
たくさん遊ばせるのが訓練なんですね。
宮沢 はい。さらに言えば、
その遊ぶことさえ強要しないんです。
山下 と、いいますと?
宮沢 私のほうから「遊ぼう」っていくことは
しないんです。
抱っこも、こちらからはしない。
この子たちが遊びにきたら遊んで、
抱っこしてほしそうにしたらしてあげる。
山下 ‥‥そうなのですか。
宮沢 私の言うことを素直にきくのは、
命令に従っているのではなくて
コミュニケーションができているからだと、
そんなふうに思っています。‥‥さて、

時計に目をやり「そろそろ失礼しないと」
と立ち上がり歩き出す宮沢さん。
ふたりの息子も父についていきます。
もうすぐショーの時間。
パンくんとジェームズは日に3回、
パーク内にある「みやざわ劇場」での
ショーに出演しているのです。

僕も劇場入り口へ向かい、客席に。

老若男女で満員です。
ブザーが鳴り、照明が落ちると、
宮沢さんがパンくんと手をつないで
舞台に登場してきました。
いっせいに「カワイイ〜」という大歓声。
パンくんは、宙返りとか逆立ちとか
アクロバチックなことはなにもしません。
そう、ただ宮沢さんと遊んでいるだけ。

なのに、ひとつひとつの仕草がかわいくて
それにたのしい演出がほどこされていて、
お客さんはグイグイひきこまれていきます。
パンくんとジェームズ以外にも
たくさんの動物が舞台に登場しました。
それぞれがみな、元気に舞台で遊んでいます。

‥‥そういえば、
とショーをみながら僕は思います。
この「カドリー・ドミニオン」には、
のびのび元気な動物たちと一緒に遊べる
ふれあいの場があちらこちらにありました。
まず、ダチョウがそとを歩いていてビックリ。
せっかくなので、ふれあいました。

ウシもふつうに、檻のそと。
せっかくなので、ふれあいました。

カピパラという世界一大きなネズミが
園内を気ままにトコトコ。
せっかくなので、ふれあいました。

定番のモルモットにも
せっかくなので、ふれあいました。

オーストラリアの有袋類、ウォンバット。
せっかくなのでふれあいたかったのですが、
時間がなくて断念。
他の人のふれあい画像をいただきました。

赤ちゃんグマとも、ふれあえるのです。
こんな。ああ‥‥。

こおんな。もう‥‥。

なのですが、当日は人気集中だったため
僕はもうちょっと大きな子グマと
ふれあってまいりました。
この子です。

膝の上にのせてもらいました。

そんな、たくさんの動物たちと遊んだことを、
僕は「みやざわ劇場」の客席で
ひとり思い返しておりました。
ああいう遊びの中からショーが生まれるのだ。
だから僕にもひょっとしたら
「やました劇場」ができるかもしれないのだ。
などと大それたことをチラリと考えながら。

やがて、ショーは終了。
大満足のお客さんたちが劇場を出ていきます。
僕は宮沢さんにご挨拶しようと
楽屋口にまわりました。
「失礼しまーす」とドアをくぐる山下哲。
舞台道具が並んだステージ裏の片隅に、
宮沢さんの姿を見つけました。
パンくんも一緒です。
でも、なんだかちょっとおかしな様子。
近くにいってみましたら‥‥。
まだ衣装を着たままの小さな男の子が、
お父さんの腕の中で、
しずかに甘えているのでありました。

「よくできた、えらかったぞ」(父)



いきもののかわいさを、あらためて
肌身で実感してまいりました。

「みやざわ劇場」のある
「カドリー・ドミニオン」のくわしくは
こちら↓をクリック!

パンくんとジェームズの出演日程は
事前にお問い合わせくださいね。
ちなみにカドリー(Cuddly)とは
「抱きしめたいくらいかわいい」
という意味だとか。
なるほど、ぴったりのネーミングです。


Special Thanks
TV Japan 簗田智子さま
Photographer 田子芙蓉さま

2005-05-18-WED

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