主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート58
理系が苦手! というみなさんへ。 その1
なぜアナタは理系科目が苦手になったんですか?!


ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

今回は、いつもの研究レポートと
趣向を変えたテーマでお送りします〜。

「主婦と科学」の連載を読んだ方から
たびたび感想のメールをいただきます。
(いつも、ありがとうございます!)
そんなメールを拝読していると
「今まで科学が苦手で避けてきましたが」
「文系人間ですが」
という文面が目立ちます。

自称「科学苦手」「文系」な方たちが
この連載のような「科学」(もどき?)に
興味を持ってくださる。

そして、面白いことにこんな方から
寄せられる質問には
本質を突く、科学のセンスを感じられるものが!

このような人は、もともと
「完全に科学が嫌い」
だったわけではないはず、と研究員Aは考えました。
でも、いったい「どこ」でそのきっかけが
生まれてしまったのか?
ぜひ聞いてみたい、いや聞かねばなるまいと思い
まわりの人にレポートしてみました!

まず、はじめにおことわりです〜。
「どんなきっかけで理系科目が嫌いになったか」
というお話をするときに、関係しそうなものとして
「そもそも文系・理系の区別って何?」
というものがあります。
でも、これ自体とてもとても
簡単に結論の出そうにない問題なので、
今回はそのあたりはざっくりスルーして
話を進めちゃいますね。
理系科目=数学・物理・生物・地学
というごくごく当たり前な区別を
頭に置いて読んで頂けたら、と思います!

では、みなさまのご意見、
紹介してまいりましょう!

十人十色という言葉がございますが、
身近な人からの意見を集めただけで
まさに、まさに! その言葉通りの結果となりました。
なんといってもみんな一人一人
違う体験をしているわけですから!

その中でも「そうそう!」って頷く人が
多いと思われる
ご意見からご紹介しましょう〜。

よく「こんなの勉強しても社会に出て何の役に立つんだ」
って台詞がありますよね。
僕にとっては理数系科目がそれでした。

(サンタさん)

ふむふむ、確かにそうです。
英語だったら「海外旅行に役に立つかも!」と思うし
技術・家庭科だったら
「生きていくのに必要なスキルよね」
と思えるかもしれない。

でも、理系科目は「現実のワタシ」と
直接結びつくとは思えないことばかり、って
考えてしまうのは当然かもしれません。
少なくとも、教科書からは読み取りにくい。

意味がわからないものを
なーんでわざわざ苦労して勉強しなきゃなんないのか。
例えば、
「この1000粒の米粒を一つずつ
 箸でつまんで隣の皿に移しなさい」
なんて、意味もわからず
いきなりやれといわれても苦痛以外の何物でもない!

これを「どうして箸を使うのかというと‥‥」とか
「1000粒である理由は‥‥」って教えてもらえれば
同じ行為でもずいぶん違ったものに感じるはずです。

そして、カソウケンは
「現実のワタシ」と「理系科目」を
結びつけるヒントをお伝えしたいなーという
野望を持っているわけです。
‥‥すごく難しいことなんですが。

今、「1000粒の米粒を〜」という例えをしましたが
概して理系科目(特に、数学・物理)を
勉強することにはそんな苦行的な側面があると
研究員Aは思っています。
こつこつ勉強した分に比例して
理解が深まる・成績が上がるってものでは「ない」。

ちょうど、上岡山トメさんの連載で
「成功の二次曲線」のお話がありましたが
数学・物理系の科目の勉強の成果も
まさにあのグラフの通りな気がします。

ある時突然、ジグソーパズルの最後のピースが埋まって
脳の配線がぴぴぴぴぴと繋がるように
「わかったあああ」ってなるときが来るのです。
その「わかるとき」までが苦痛!
わからないけど、地味に頑張らなきゃいけない。

註)
 ‥‥ひょっとしたら、それは単に
 理系科目が苦手なのに、
 好きだから、憧れだから、勉強してきたという
 研究員Aの個人的な感覚かもしれません。
 他の理系の人がどう感じているのか
 ぜひお聞きしてみたいところです。

今回頂いたご意見の中に
「いつの間にかできなくなった」
「気がついたら良い点数をとるのに
 すごい努力が必要になった」
というご意見をいくつか頂いたのですが、
これはそんな数学・物理系の科目の特徴も
関係しているのかなーと思いました。

その「最後のピース」がはまって
「わかった」瞬間はとにかく快感!
でも、そこまで至らずに
「わざわざ努力する必要ないや〜」と諦める方が
多いのも頷ける話です。
勉強しただけ比例するほうがいいもの。
そもそも苦労しただけの見返りがあるのか?ってね。

中学のときは数学が超得意だったのに
(まず満点でした)
高校で、数IIB(‥‥古い?)の証明問題で
ある日突然、「まったく理解できない」
というものに出くわしたのです。
参考書を見ても、なにかが根本的に理解できない。
その問題を、授業開始までに
黒板に解いておく番だったのですが
途中まで書いてにっちもさっちもいかなくなりました。
しょうがないので途中でやめて
「もはやこれまで」と最後に〆めたら、
「うわははははは。誰だこれ書いたやつ!」
と、なぜか先生にものすごく受けてしまい
「ああ、ぼくはこっちの人なんだ」
と強く思いました‥‥。

(ほぼ日・シェフさん)

うはははは! 「Q.E.D.」(以上、証明終わり)
ならぬ「もはやこれまで」!
確かに「こっち側」のほうがいいですよ、
と理系の研究員Aも思いますっ。

だって、勉強して苦労して「あっち側」になれても
待っているものはそれほど‥‥ねぇ。
まず、モテない。
理系男はモテないと相場が決まっている!
(お医者さんは除く)
‥‥え、なんですか?
はいはい、理系女もですよー。わかってますってば〜。

「理系のための恋愛論」なんて連載が
人気を博することからも
その涙を誘う状況は伺えます。
理系だからモテないのか
もとからモテない人が理系に進むのか
‥‥このテーマも奥が深く
研究しがいのあるテーマではありますが
この研究員A、自己を見つめる勇気は
ただいま持ち合わせていないので
機が熟したときにでも
改めて取り上げたいと思います。
‥‥っていうか、いつ機が熟するのだ?

それに、理系は長々と苦学する割には給料が安い!
なんと、同じ大学で文系学部・理系学部の卒業生の
生涯賃金を比較したら
5000万円分の差がついたというデータもあります。
マイホーム一軒分ですよっ!

註)
 こちらのTech総研の記事を見る限り、
 職種にもよるようです。

──なんていう具合に
「わざわざ苦労して
 理系科目を勉強する理由が見つからない」
という人がおおぜいいたとしても
おかしくはありません!
っていうか、むしろ自然な気がしてきた。

理科・科学は好きだったけど
「苦労してまで」勉強する気が起きなかった。
そして、いつの間にか
縁のないものになってしまった。
そんな方は少なくないのではないでしょうか。

とはいえ、わざわざそんな理科系への進路を
選択する人もいるわけです。
例えば、研究員Aもそんな一人です。
研究員Aの場合は小さい頃から
「学研の科学」や子ども図鑑を参考に
あやしげな実験をしておりました。

でも、直接的に「理系に進もう」と思った動機は
もっと大きくなってからです。
小学校5〜6年でしょうか?
TVドラマの「ナイトライダー」に出てくる
メカニックの女性に憧れた。
「ガンダム」を見て
宇宙コロニーを作って見せようと決心した。
(‥‥だからモテから遠ざかるんだ。とほほ)

上で「こんなの何の役に立つのだ」と書いた
サンタさんは

宇宙に興味を持ったり
 F1のメカニックに興味持った時に、
『あっ、勉強しとけば』って後悔しました。

(サンタさん)

と続けています。
ひょっとしたら、学生時代に出会っていたら
「勉強する意味」が感じられたのかもしれません。

他にも
「ファインマンに出会っていたら」
「佐藤雅彦さんを知っていたら」
なんて声も。
なんらかの「きっかけ」にいつ出会うかで
理系科目をやる気になるか
変わるものなのかもしれませんね。

(来週に、つづきます!)

メール、お待ちしています!
 理系科目が苦手だった! という皆さま、
 「体験談」をぜひぜひお寄せ下さい!
 「『虚数』なんて気持ち悪くて受け入れがたかった」
 「公式を見ただけで虫唾が走る」
 「亀の甲(ベンゼン環)の見た目がどーにも苦手」
 などの理由もオッケーです。
 宛先はpostman@1101.comまで!
 お待ちしておりま〜す。



参考文献
理系白書 毎日新聞科学環境部 講談社

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2005-04-29
-FRI


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