主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート46
モテモテになる?! ニオイの科学。



ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

通常、研究者はひとつの研究テーマにどっしり腰を据えて
年単位で取り組むものですが
飽きっぽい研究員Aは隔週でテーマが変わります。
目下の研究テーマは「香水」。
「私にぴったりな香水はないかしらん♪」と
香水探しをしているところなのです。
え、そんなの研究でも何でもないじゃないか、って?

ネットで予備知識を仕入れ、
香水のいっぱい置いてあるお店に出向いて
ひたすら、くんくんくんくん…。
もう鼻がおかしくなって
何がなんだかわからなくなってきた今日この頃です。

いろいろ試してみるとわかるのですが、香水が面白いのは
「うえ」っと気分悪くなっちゃうのと
「うっとり」と気分良くなっちゃうのと両極端。

研究員Aにとって「これは万人受けするだろう!」と
思う香水が、「キライ」という意見が
ネット上にちらほら。
逆もまたしかり。とっても不可思議です。

この「ニオイ」の好みはどこから生まれるのでしょう?
やはり、本能的なものと関係がありそうです。
実は、異性を選ぶ際に
「ニオイ」が大事な役割を果たしているという
研究があるのです。
というわけで今回は
「意中の相手を振り向かせる」のに役に立つかもしれない
「ニオイの科学」をレポートします〜。
なんか大風呂敷広げていますが
大丈夫なのでしょうかこの人は。

(今週、ノーベル医学生理学賞が発表されましたが
 これは嗅覚の研究に関してです。
 ただ今「ニオイ」はホットなテーマなんですよ〜。)

パパのニオイで女性を口説く?!

まずご紹介する研究は
「男性諸氏、パパのニオイで女性を口説くべし」
というもの!
女性は自分の父親と似たニオイのする男性を
好ましく思う、というのです。
Jacob, S., et.al. Nature Genetics DOI: 10.1038/ng830 (2002).

男性が二晩着続けたTシャツがサンプルになります。
この汗まみれTシャツのニオイ(臭い?)を
女性被験者に嗅いでもらい
「一生嗅ぎ続けなければならないにおいとしてならば、
 どのニオイを選ぶか」を答えてもらいました。
そして体臭に関係する遺伝子を調べたところ
女性が好む男性ほど、
「その女性の父親から譲り受けた遺伝子」
と一致する傾向が強かったのです。
(「母親から譲り受けた遺伝子」については特に関連なし)

ということは、「気になる女性の父親の体臭」
に近い成分の香水を使えば
相手の好みのニオイに変身できてしまうかも!

気になる人の親の体臭を分析して
その結果に近い香水を選んでくれる!なんて
サービスあったら面白いのに〜。
もっとも「意中の相手の父親のニオイ」という
サンプルの採取が困難を極めそうです。
本サービスは、探偵業と提携する必要が
あるかもしれません。

さらに、さらに面白いことにこの「ニオイ」は
血液中のHLAと関連があるというのです。
HLAとは「白血球」の血液型のこと。
ちなみに、A型とかB型とかの血液型は
「赤血球」の方になります。

こちらのサイトの最後の方には
「HLAの型を調べることで
 より相性の良い相手を見つけることができるかも」
と述べております。
ちなみに、HLAを調べるのに必要な血液は約10ml。
気になる彼女のパパの血液を
10mlほど手に入れることができればオッケー!
…って、ニオイよりもよっぽど難しくない?
10mlなんて「こっそり」入手できない量ですし。
医療機関と結託する必要があるかもしれません。

「その気にさせる」のと
「いっしょにいて心地よい」は
遺伝子レベルでちがいがある!!

さらに…ここまで来てちょっと申し上げにくいのですが
お伝えしておかなければいけない他の研究があります。
先にご紹介した説は
「遺伝子が似ている人のニオイを好む」
でした。
実は、過去に
「遺伝子がかけ離れているほど好感度が上がる」
という、まるっきり逆とも言える研究結果が
発表されていたのです。

さて、どちらを信用したらよいものやら。
しかも、「遺伝子が近い方を好む」とした研究は
心地よさ(pleasantness, liking)が判断基準で
「かけ離れている遺伝子の方を好む」とした方は
その気にさせる(wanting)を指標としているとか。

ってことは、苦労して「彼女のパパ」のニオイを
採取して香水を選んだとしても、
「いい人ね♪」で終わってしまうニオイってこと?
そりゃー困っちゃいます。
でもでも、なんと言っても配偶者として選ばれるのには
安心感が大事な要素なわけで‥‥むにゃむにゃ。

モテるための科学のはずだったのに「やっぱり」
役に立たないじゃないか〜と憤慨している方。
実は、まだ「モテる」ためのニオイの科学があるんですっ。

それもずばり!
「母乳を与えている母親と新生児は
 他の女性の性欲を高めさせるニオイを発している」

というもの。

これが面白いのが「出産経験のない女性」
が被験者ってことでしょうか。
子どものいる女性が
「ああ、懐かしいニオイ〜
 今やうちの子も『あんな』になっちゃったけど
 あの頃は可愛かったわあ。また赤ちゃん欲しい!」
って反応を示すのはわかる気がするのです。
でも、子どものいない女性が! なんですものね。
んー生命の神秘〜。

つまり、男性は母乳のニオイをまとってみると
モテモテになるかもしれないってことです。

今 日 の 結 論

「母乳のニオイで女性を惹きつけて
 パパのニオイで結婚まで持ち込む」

‥‥いかがでしょうか?
ただ、その成否はカソウケンの
あずかり知らぬところですので
どうか自己責任でお試し下さいませ。



参考サイト
Nature BioNews
三菱化学ビーシーエル・医療関連情報

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2004-10-08
-FRI


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