主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート22
人見知りの科学。 赤ちゃんは美人がお好き?



ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。

つい先日、1歳の誕生日を迎えた研究員C。
最近はそうでもありませんが
生後8ヶ月の頃は
人見知りの激しいオコサマでありました。
赤ちゃんの正常な発達の過程でもある「人見知り」。
これは、お母さんなどの身近な人とそうでない人の
区別が付いたことによる正常な反応だとか。
そうであることはわかってはいるのですが。。。

あやそうとして近づいてきた人に対して
「びええええ」と泣く赤ちゃんの周囲には
居心地のわる〜い空気が流れます。
泣かれてしまった方は少なからず傷つくし
泣いた赤ちゃんのママだって気まずい。

お兄ちゃんの研究員Bの方も
人見知りの時期はあるにはありました。
彼の場合は「固まる」くらいで
(緊張して文字通りフリーズしていた)
泣くことはなかったんです。

一方、弟の研究員Cの方は警戒心が強いキャラなのか
泣く泣く泣く。
研究員Aが子連れで実家に帰ったとき
さあ羽を伸ばすぞ〜と期待していたのですが
「場所見知り+人見知り」で
研究員Cは母からちーっとも離れない。
まるで研究員Aの背後霊。
かえって疲れ倍増なのでした。とほほほほ。

そんな研究員Cでしたが、その人見知り真っ最中の時
こんな出来事がありました。
出張で母乳相談をしてくださる助産師さんに
来て頂いたときのこと。
その助産師さんのお嬢さんも用があったので
一緒に来たのです。

この彼女、高校生くらいなのですが
可愛い上に感じが良い。
オバチャン研究員Aから見ても
目を細めてしまいたくなる感じ。

研究員Cは男性よりも女性に
激しく人見知りするタイプだったので
泣くだろうな〜困ったな〜と思っていたら。。。

その可愛らしい高校生のお嬢さんに対して
研究員Cは人見知りするどころか
うきゃっ、うきゃっとハイハイで突進して
自己アピール。満開の笑顔を見せて
彼女にまとわりついているのでありました。

こ、この手のひらを返したような
態度の違いはなんなんだ〜
じょしこーせーに媚びを売るとは、このバカオトコ!
と母は心の中で呆れかえってしまったわけです。

研究員Aに限らず、
このあたりの年齢のお子さんをお持ちの方は
思い当たるのではないでしょうか?
赤ちゃんは「お母さん」「お母さん以外」どころか
「老若男女」までも区別している!

というわけで今回は
赤ちゃんの「男女の区別」の研究に
まつわることをレポートしたいと思います。

中央大学の山口真美先生の研究をご紹介します。
赤ちゃんは7〜8ヶ月になると
顔の男女識別が完全にできている! というものです。

さて、ものを言わない赤ちゃんに対して
「男女を区別できる、できない」なんて
どうやって実験するの? って思いますよね。
これは赤ちゃんの
「珍しいモノには注目するが
 慣れたモノからは目をそらす」
という性質を利用するのです。

確かに、ヤツらは飽きると薄情なくらいに
目をそらしますよね。
研究員Bも研究員Cもそうでしたが
帰宅直後の所長に対しては
ニコニコ〜と笑顔を振る舞っていますが
しばらくすると目も合わせない。

それどころか、ムリヤリ目を合わせようと
所長が躍起になったりすると
「ぷいっ」「ぷいっ」と高速で首を動かして目をそらす。
しつこい所長がBやCの首を固定して
目を合わせようとしたら
(そこまでするか? 普通)
今度は眼球だけ動かして目をそらす!
たいしたもんです。

研究員Bがこのくらいの時期、研究員Aは
「なんだか研究員Bは私に対して素っ気ない。
 ひょっとして嫌われている??」
なーんて気にしたことがありましたが
要するに母親を見慣れていて
注目する価値がないと思っていただけのようです。

なんだか話が横道にそれてしまいましたが
要するに、話のできない赤ちゃんに対する実験方法は
赤ちゃんの
「見慣れないモノに注視する」
という性質を利用するということです。

詳しい実験内容はご紹介すると長くなるので
割愛させて頂きます。
詳しくは山口先生の著書
『赤ちゃんは顔をよむ』(紀伊國屋書店)
をご覧下さいませ。

その実験によると
「生後6ヶ月の赤ちゃんは男女認識は不完全であるが
 生後8ヶ月の赤ちゃんになると完全になる」
という結果が得られたのです。

「生後8ヶ月にして男女の違いがわかっている!」
という結果、小さいお子さんをお持ちの方ならば
「へえ〜」よりもむしろ
「やっぱりね」という反応じゃないかなあと思います。

上記の山口先生の著書によると
「おじいさんやおばあさんの顔
 男性の顔を見て泣く子は多い」
「赤ちゃんは目にしたことのない
 珍しい顔を見て驚いて泣く、
 これがひとみしりの基本構造」
ではないかと書かれています。

ってことはですよ?
「例の可愛い女子高生と研究員Aが似ているので
 研究員Cは人見知りせずになついた」
という研究員Aを勇気づける解釈を
することもできそうです。
‥‥いや、できないですね。
あまりにも無理があり過ぎ。ごめんなさい。

それに、研究員Cの場合は
男の人に対してはあまり泣かないのに、
研究員Aの母親や、研究員Aのママ友達を見て
泣くことが多かったんですよね〜。

だから、彼の場合は
「紛らわしい人が来た。
 ママと間違えちゃったらどうしよう、びえ〜」
って反応だったのかも。
男性の場合は紛らわしくないので泣かない。
研究員Aと同年代のママ友達や
研究員Aとそっくりな「おばあちゃん」
(イヤになるくらいよく似ている!)
は紛らわしい。

で、高校生のお嬢さんは
ぜ〜んぜん紛らわしくないから泣かない、と。
がっくり。←何を期待していたのだ?

にしても、研究員Aの母(おばあちゃん)と研究員Aが
彼にとって同じカテゴリーなのか〜と思うと
さすがにへこみます。くう〜。

実は、「キレイなおねえさん」に対して愛想が良い人物、
カソウケンにはもう一人いました。
1歳前後の研究員B。
それもちょっと露骨? と思えるくらいに。

研究員Bの場合は
「きちんとした服を着て、ぴしっとメイクをした美人」
がお好みだったらしい。

ある時、ニューハーフの方たちが集合する
テレビ番組をやっていたら
研究員Bくん大興奮。
確かに、彼の「タイプ」に当てはまるもんなあと
妙にナットクしてしまったわけです。

このキレイなおねえさん好きはうちの子だけ?と
ずーっと疑っていたのですが
「ひろき研究員」がそれにずばり関係しそうな
興味深い資料を教えてくださいました。
ありがとうございます!

それは
「2〜3ヶ月の乳児でも、成人が魅力的だと評価した女性の
 顔写真の方を見つめる回数が多い」
という研究!
(Langlois, et.al. 1987)

その研究結果によると赤ちゃんは見つめる回数はそれぞれ
・高魅力顔 9.22回
・低魅力顔 8.01回
だとか。

この9回対8回というのが有意差なのかどうか
研究員Aには判断しがたいのですが、どうなんでしょう?
とはいえ、こんな実験をわざわざやってしまうところが
面白いところです。
首もすわらない2〜3ヶ月の乳児相手に!

それにしても「男女」だけでなく
「老若」や「美人」までも
判断している「かも」しれない赤ちゃん。

そのあたりの判断を
コンピューターにやらせようとしても
相当難しいことになりそうですよね。
そんなことを生まれてまもなくできてしまうなんて
人間の脳ってやはりたいしたものです。

「この『キレイなお姉さん好き』
 どこの赤ちゃんもそうなのかな?
 少なくとも私の遺伝ではなさそう。
 だって私は面食いじゃないし。。。」
と言ったら夫である所長に
「なんて失礼なことを言うんだ!
 キミは面食いだよ。断じて面食いだあ〜。」
と怒られてしまいました。

我々夫婦の名誉(?)のために
「カソウケンのメンバーは全員面食いである」
ということにしておきましょう。




参考文献

「赤ちゃんは顔をよむ」
 山口真美著 紀伊國屋書店

「シアーズ博士夫妻のベビーブック」
 W.シアーズ著 主婦の友社

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2003-11-28-FRI


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