主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

ほぼ日・大アンケート祭り
「主婦と科学。」

※終了しました。
 ありがとうございました。

研究レポート その8
物理学者ファインマンとそのお父さん。

ほぼ日5周年おめでとうございまーす。ぱちぱち。
このおめでたい空気に乗っかって
自分まで勝手にハッピーな研究員Aです。

「ほぼ日創刊5周年記念企画」のひとつである
「お父さんと、いっしょ」
研究員Aはとても楽しみにしている連載です。

登場するお父さんはひと味もふた味も違うお父さん。
でも、みんなとってもステキ。
そもそも、「お父さん」に正解なんか
ないんだろうなーと思うと
「良妻賢母」像から遠くかけ離れている研究員Aは
勇気がでるわけです。
。。。って、そんな読み方をする連載じゃないですね。

一方で、「お父さんならでは」的なものもしっかり
浮かび上がってくる連載ですよね。
例えば、「趣味や感覚を受け継ぐ」ということ。

「父から子に受け継がれる」ときたら
カソウケンとしては
この父子をとりあげねばなりませんっ。

物理学者のファインマンとそのお父さん。
ファインマンの科学的センスを形成するのに
必須の存在だったと言われる
そのお父さんのエピソードをご紹介しまーす。

R.P.ファインマン氏は朝永振一郎博士らと共に
ノーベル物理学賞を受賞した科学者です。
「ファインマン物理学」の教科書の著者としても
有名なので、理系の方はご存じの方が多いかも?

でも、ファインマン氏を語るときに忘れてはならないのは
「ご冗談でしょう、ファインマンさん」
をはじめとするエッセイ集。

そのエッセイ集で、
彼のチャーミングな人柄に触れたら
男女問わず惚れてしまうこと間違いなーし!
研究員Aもエッセイ集を読んで以来、
「ファインマン物理学」の教科書も
全巻揃えてしまったというハマりぶり。
。。。はい、教科書はそんな理由で
買うもんじゃないですね。

わからないことがあったら自分の身体を使って
確かめずにはいられない子供の好奇心。
いたずら好きで周りの人を驚かすためには
手間を惜しまない。
また、虚飾や権威がだいっきらいで
偉い人であろうとくってかかる。
ともかく、「胸のすく」キャラクターです。

カソウケン本部「ファインマン」「文献紹介」などで
研究員Aのファインマンに対する
オモイノタケ(!)を綴っているので
もし良かったらそちらもごらん下さいませー)

そのファインマンのお父さんは
洋服のセールスマンでしたが
科学や自然界を愛する
第一級の「科学ゴコロ」を持った人でした。

そして、息子のリチャードに
「何かの名前を知っているということと
 何かの意味をほんとうに知るということの違い」

をあらゆる場面で伝えようとしたのです。

例えば、「困ります、ファイマンさん」には
こんなエピソードがあります。

ファインマン父子は林の中で散歩しながら
自然界の面白いできごとについて
語り合うのがならわしでした。
その様子を見ていた他の親子も「それはイイ!」と
真似するようになります。

他のお父さんは、子供に「あの鳥の名前はね〜」と教えて
「自然界のことを語る」のです。
でも、ファインマンのお父さんは違います。
「この鳥の名前はポルトガル語だと何々、中国語だと何々」
てな具合にテキトーな名前を教えます。
(もちろん、でたらめ)

そこで、ファインマンのお父さんはこう続けます。
「さあ、それよりもあの鳥が何をやっているのか
 よく見るとしようか。
 大事なのはそこのところだからね」
そして、親子でその鳥が何をしているのか
なぜそんなことをするのか
一緒に考えるのです。

他のお父さんは子供にその鳥の「正しい」名前を
教えてくれるわけです。
だから、ファインマンはあとで友達に
「きみのおやじはそんなことも教えてくれないのか?」
なーんてイジワルを言われてしまいます。
でも、ファインマンにはお父さんとの会話が
意味あるものだと自信があるのです。

他にも、こんなエピソードが。
荷車にボールを載せて遊んでいたファインマンが
ボールの不思議な動きに気付き、父に質問します。

ファインマンのお父さんはそこで
「それは慣性の法則云々」
と簡単に法則の名前をあげたりはしません。
「それはだあれも知らないことなんだよ」と始めます。
そして、「もっとよく観察してごらん」と息子を促し、
親子で「楽しい話し合い」をするのです。

下手をすると
「モノを多く知っていること」
「知識が正確であること」

ばかりが何かと優位になりがちです。

でも、そこから「科学的ココロ」は生まれない。
「ほんとうの意味」を探す姿勢こそ大事なんですよーと
ファインマンのお父さんから教えられます。うんうん。

そして、「ファインマン物理学」の教科書には
そのお父さんの伝えようとした「科学的ココロ」が
いっぱい散りばめられています。
「つねに立ち止まって具体的な例をあげること」
「言葉を尽くしてその法則の意味を伝えようとすること」

なんといっても、物理が苦手だった研究員Aが
「そういうことだったのね」初めて
フに落ちた(気になれた?)教科書です。
特に、第1巻の「力学編」は
物理が苦手だった方、文系の方にもぜひ!
ファインマン好きじゃなくても、楽しめる。。。かな?

でもでも、こういうものって「付け焼き刃」ではない
「その人の中にあるモノ」のだからこそ
子供に受け継がれるものなんですよね。
たとえば、研究員Aなんかが
ファインマンのお父さんの真似をしようとしても
「タチの悪い教育ママ」になりかねませんもの。
ヘタな小細工じゃどーにもならないです。

さてさて、カソウケンでは父から息子へ
どんなものが受け継がれるのでしょうか?

父・所長の趣味は「パソコン組み立て」。
ハードディスクやらCPUやらケースやら買って、
オリジナルのパソコンを作るのです。
所長も息子にその意志を継がせるべく、
研究員Bが乳飲み子の頃から英才教育に励んでいます。

研究員Bは生後9か月にして
パソコンのパーツショップ巡りデビュー。
「これは世の中で最速のCPUなんだぞー。
 キミに特別に触らせてあげよう」と
「一流(?)」に触れさせる教育もしている模様。

その成果もあってか、研究員Bは
「マウスなるもの」をカテゴライズできる1歳児に。
(単に家中の色々な形のマウスを
一か所に集めただけ、とも言う)

所長は、研究員Bか研究員Cが将来
TV東京の「パソコン組み立て王選手権」
あたりに出場したら
目を細め、落涙して喜ぶに違いありません。

。。。って、なんだかなー。
残念ながら、カソウケンから
「ファインマン」は育ちそうにありません。

というわけで、
「ファインマンの魅力を世に伝えよう会(仮)」
会員1号の研究員Aのレポートでした。




参考文献
「ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)」
 R.P.ファインマン 岩波現代文庫
「ご冗談でしょう、ファインマンさん(下)」 
R.P.ファインマン 岩波現代文庫
「困ります、ファインマンさん」
R.P.ファインマン 岩波現代文庫

 

2003-06-06-FRI


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