第12回 金メダルを確信した瞬間。
永田 荒川選手のフリーの演技に戻りますが、
3人の誰が金メダルをとるか
まったくわからないというなかで、
刈屋さんが金メダルを確信した瞬間というのは
どこだったんでしょうか。
刈屋 いや、もう、ほんとうに、
最後までわからなかったですね。
永田 あの、最後に、最終グループの選手が出てきて
リンクでそれぞれ練習をするときに
サーシャ・コーエン選手が転倒してましたよね。
刈屋 はい。
サーシャ・コーエンは
明らかにかたかったですね。
それでも、荒川が勝てるかもしれないとは
思えませんでした。
永田 なるほど。
そして、最後のフリーがはじまって、
サーシャ・コーエンが転倒します。
刈屋 それでもわかりません。
でも、転倒したあと、さらに失敗して手をついた。
永田 はい。
刈屋 そこでぼくが感じたのは、
「荒川が勝てるかもしれない」
ということではなくて、
「村主がメダルをとれるかもしれない」
ということでした。
永田 ああああ、なるほど!
そっちのほうがリアルなんですね。
刈屋 はい。
これはメダルをふたつとれるかもしれない。
そう、思いました。というのは、
以前のサーシャ・コーエンであれば、
失敗したあとが、ばたばたになるんです。
ところが‥‥。
永田 まとめましたよね。
刈屋 まとめました。
ばたばたにならなかったんです。
永田 あれも、ソルトレイクの失敗から
4年間を過ごしたという
サーシャ・コーエンの強さでしょうか。
刈屋 そうでしょうね。
あの強さを見て、
あ、これはそうかんたんにはいかない、
と思いました。
だから、荒川選手が、
金をほんとうにとれると感じはじめたのは、
スルツカヤの最初の
コンビネーションジャンプが
2回転ー2回転になったところです。
永田 転倒のところではなく?
刈屋 そのまえです。
まず、最初に予定していた
コンビネーションジャンプを
スルツカヤがやらなかったんですね。
その時点で「あれ?」と思った。
つまり、いつものスルツカヤじゃないんですね。
いつものスルツカヤじゃなくても
そのまま滑り切っちゃえば
点は出るんですよ、スルツカヤですから。
ところが後半のコンビネーションに来たところで
また、やらなかったんですよ。
そこではじめて、荒川が勝てる!と。
永田 じゃあ、ほんとうに最後の最後。
刈屋 最後の最後ですね。
とくにさっき言った第二採点の部分があるので
点が出ないとわからない。
でも、それを含めても
これは荒川が勝った、と思うのはそこでしたね。
転ぶ、すこし前の時点で
2回転ー2回転になったときに
あ、荒川が勝ったと思いましたね。
永田 その後、スルツカヤがまさかの転倒。
刈屋 その時点では、もう、
荒川が勝ったと思ってましたから、
転んだときは、
「村主がメダルに届くかもしれない」
と一瞬思いました。
結果は‥‥残念ながら、
そうはなりませんでしたけど。
永田 はい。

2006-06-20-TUE

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN