高阪 さっき、踊りを教えていただいて、
ひとりで踊ろうとしたとき、
実は何も考えてない状態でやるように
心がけてやっていました。
花柳 おー、すごい!

高阪 理屈を考えちゃうと、だめなんですよ。
だめっていうのは、
核心が見えなくなってきちゃうと思うんですよ。
自分の体を信じるというか、
自分の体の持ってる、
自分しかできない動きっていうのが
必ずあるわけなので、
そこにできるだけこう、
教えていただいたことを近づけてあげることを
できるだけ意識してやるようにしてたんですよ。
花柳 いや、あの、僕、驚いたのは、普通、
素人さんがこう、止まっちゃった後って、
絶対に思いつかないんですよ。
もう止まって、頭で考えてる方はですよ。
頭で考えてる方は、
うっと止まるともう次が出ないんですけど、
高阪さんの場合は、止まっても
そこから、思い出すじゃないですか。
高阪 そうですね、
花柳 それが体で感覚で覚えてらっしゃるって
ことなんだなって思って、
すごいなーって思いながら。
人と感覚が違って、
やっぱり体でものごとを入れるっていうのに
慣れてる方なんだなって。
そこが一番驚いたところですね。
高阪 そこが一番大事だと思うんですよね。自分は。
ものすごく大事な、
根本的なところだと思っているので、
で、普段、何をするにもそこを心がけていて、
別に、今、今日教えていただいたこと、
日本舞踊だけじゃなくて、
頭を使わなきゃいけないようなところでも
実はそういうふうに応用するようには
してるんですけど、
これはまた別の角度からになっちゃうんですけど、
何が今、起こってるのかっていうのは
自分にしか分からないことだと思うので、
教えていただいた、足のこの運びであったりとかも、
輔蔵さんの動きをそのままやろうとすると
多分うまくいかないと思うんですよね。
だから自分の体の動きにそこをできるだけ
変えてあげると覚える。
要は人の名前を、名前で覚えるんじゃなくて、
あの人は左利きだったなとか。


花柳 ああ、はい、はい。
高阪 (笑)そういうところで覚えるようにすると
ものすごくすんなり、
体に入るっていうところの話だと思うんです。
そこがすごく大事だと思うんですよね。
花柳 はい、いや、ほんとそうですよね。
僕なんかもそういうのを、
体で覚えていく質です。
頭で入れる人って結構ぱっと入っちゃったりして、
でも忘れるのも早いんです。
高阪 (笑)そうなんですね。
花柳 器用にその場では覚えられるんですけど、
僕なんかは時間がかかるんだけども
忘れないっていう方で、
すごく何か、お話聞いてて、
一緒だなあっていう感じがしましたね。
高阪 輔蔵さんは球技とかはどうですか?
花柳 球技は、僕、球技はほとんどできないです。
高阪 あ、やっぱそうですか、
花柳 はい、ほとんどできないんです。
走るのと水泳だけですね。僕ができるのは。
高阪 自分も、球技、全くだめなんです。
花柳 あ、そうなんですか、へえ!
高阪 自分は卓球やったら
いっつもホームラン打ってましたね。
花柳 (笑)

高阪 なにやっても球技はだめだったんですよ。
ほんと一切だめ。野球もへたくそ。
花柳 一緒ですね。
高阪 なにやってもだめだったんですよね。
で、まさに、自分、柔道もほんとに
自分で、あ、こういうことかって
分かるようになったのが
七年目ぐらいなんですけど。
その長い時間かけて、こう、
ああでもない、こうでもないってやってた分だけ、
見つけたものっていうのがすごくこう、
自分の中で価値があるもんだって、
体が多分そうやって思ってるんだと
思うんです。忘れないんですね。
花柳 ああ、そう、分かります。はい。
高阪 ずーっとできるんですよね。
で、単純に輔蔵さん、
この動きができなかったけど、
ある日突然できるようになった
とかっていうのはありますか。
その、分かるようになってから。

花柳 そうですね、
僕はどっちかっていうと固い動きが得意で、
固い動きばっかりだったんですけど、
柔らかい動きができるようになったっていう、
その、何て言うかな、全くできないところから
できるようになったっていう、
変わり目はありましたね。
何か、すんなりいった。
見るからに日舞じゃない形だったのが、
舞踊家ぽいっていうか、
その、何て言うかな、その境はありましたね。
高阪 ああ、そうですか。
できるようになってからは
「できなかったこと」を再現するのは
むりだったでしょう。
花柳 はい、その通りです。
高阪 やっぱそうですか。
自転車のようなものですよね。
乗れるようになると、
補助輪つけて乗るのが
ものすごく難しいんですよね。
花柳 難しい、恐いですね。返って恐い。
高阪 恐いですね。あれと同じだと思うんですよね、
そういうことが多分いっぱい積み重ねていって、
それで成長していくんだと思うんですけれども、
その境目っていうのは必ずどなたもある、
気づいてないだけかもしれないですが
必ずあるはずなんですよ。
自分もその境目っていうのは
間違いなくあったのを覚えてます。
それからは昔の型っていうの、一切できなくなって、
逆にやりにくくてしょうがなくて
できなくなってくるんですよね。
花柳 はい(笑)。
高阪 だからできるようになったときってのは、
自分の体のことを理解できるようになってた、
なるようになったから
できるようになったと思うんですよ。
で、その、理解した部分ていうのが
すごく大事なんだっていうのが
何か分かるようにできていけばいいなっていうふうに
自分は今、思っているんですよね。
分からない人に、いきなり頭ごなしに言ったって
多分、分からないんです。
だからヒントの部分をあげるっていうのが
上手にできたらいいなと。

もうほんと単純な質問なんですけども、
男の踊りと女の動き、あるじゃないですか。

花柳 はい。
高阪 えっと、男の踊りがうまい人っていうのは
女の踊りはどうですか?
花柳 あの、やっぱりどっちかが上手いですね。
今の舞踊家は全部やるんですけれども、
やっぱりメカニズムが違う部分だと僕は思っています。
高阪 実はですね、自分が今、えっと、
ちょっと何となく見えかけてきているところで、
人それぞれの動きで大まかに二つ、
二種類あるっていうふうに思っていましてね、
花柳 はい。
高阪 それが東の動きと西の動きって
自分が勝手に名前つけてますけど。
花柳 沼澤尚さんとの対談のときに、
おっしゃっていたものですね。
高阪 そうです、はい、で、東の動きっていうのは
要は閉じる動きなんで、
さっき言ってられて女形の動き、
西の動きってのは開くので
男形の動きなんですけども。
花柳 はい。
高阪 たとえば自分が柔道やってたときに、
ずっと実は西の動きの技の覚え方を
実はしてたんですね。
で、それが基本だっていうふうに思ってた、
というか、そういうふうに教えられてたので
ずっとそうだと信じてやってたんですね。
ところがどうしてもうまくいかないんで、
ある日、変えたら、そしたらうまくいったのが、
それが実は東の動きだったんですよね。
多分人によって西寄りの人と東寄りの人っていう、
まだそこははっきりしたことが分かってないんだけど、
分けられるんじゃないかなっていうふうに
思っているんです。
花柳 話が飛んじゃいますけど、僕も、今、
我風(がふう)という
日本舞踊のユニットを組んでまして、
女形の関西の方と、
東京の僕は立ち役の男形で
ユニットを組んでやってるんです。
それはもうほんとに踊り方が二人違って、
ほんとにまさに僕は西の動きで、
向こうは東の動きなんですね。
だからもう見え方も向こうはもう、
おしとやかで可憐なんですけど、
僕は、ぱっという感じで。
全くもう体のメカニズム見ても全然違うんですね。

高阪 うん、はい。
花柳 自分がその方とやってから、
踊りが変わったんですね。
それは西の動きの中に東の動き、
その何て言うかな、その人に習うようにした。
そうしたら踊りが変わって幅が出て来た。
まさにほんとに逆の動きの使い方すると
幅が出るっていう、
まさにそうだなっていうのを、
お話聞いてて思いました。はい。
高阪 西と東の中間あたりっていうのを
うまく使うっていうのが、すごくまろやかっていうか。
自分はもう東寄りっていうのが分かっているので、
だから西の動きを使うんだけれども、
東に寄った西の動き(笑)なんですけどね。
ちょっと意識してやるようにしているんです。
そっからは、先っていうか、あとはもういろんな、
こうしていろんな方にお話を聞いたりとかして、
それでどんどん研究していきたいなと
思っているんですけれども。
いや、ほんといろいろありあがとうございました。
ためになりました。
花柳 こちらこそ、こんなんでよろしいでしょうか。
高阪 いや、勉強になりました。
花柳 僕にも是非体操を教えてください。
できあがったら。
高阪 はい、頑張ります。

  (花柳輔蔵さんとの対談は、
 今回で終了です。
 次のTKの取材をおたのしみに!)
   
    2008-01-04-FRI    
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