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- ばあちゃん、今日は、ばあちゃんの仕事の話聞きたいんだけど。
- 祖母
- 仕事の話かー。ばあちゃんは、最初は声優になりたかったんだ〜。
- ー
-
えっ?! (いきなり変化球がきた・・・)
声優って、アニメの?
- 祖母
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そうそう。漫画とかアニメ、ばあちゃん好きでよ〜。
結婚してからは趣味も何もなかったけどなぁ。
- ー
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へぇ‥‥。(この話はあとでじっくり聞こう)
その、結婚してからってことだけど、
ばあちゃんはじいちゃんと鉄骨会社やってたでしょ?
いつ、立ち上げたの?
- 祖母
-
結婚してまもなくだな。
それまでは、じいちゃんは大きい鉄骨会社に勤めてて、
でも自分でやりたくなったんだろうねぇ。
理由はちゃんと聞いたことがないから、
わかんないけどね。
- ー
- ばあちゃんは、そこでどんな仕事してたの?
- 祖母
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何でもしたよ。鉄骨の溶接もしたし、
図面見れば何でもつくったし。
台とかちっちゃいものなら、ばあちゃん一人でつくったな。
2階の屋根の上まで上がるのも普通だったよ。
- ー
- 2階の屋根まで! 怖くなかったの?
- 祖母
-
最初は「怖くて登れない〜!」って言ったけど、
「下見ないで登ってこい!」ってじいちゃんから怒られて
がんばって登ってったんだよ。仕事だからなぁ。
- ー
-
へぇ・・・。溶接とか、図面とかは、
今みたいに学校行って勉強する、
ってわけじゃなかったんでしょ?
- 祖母
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そう。全部じいちゃんするの見て、覚えて。
溶接する時は、火花散るし光がすごいでしょう?
目ぇ焼けて、一晩眠れなくなるの。
ゴロゴロ〜って目の中に石ころ入れられたみたいに、
痛くて痛くて、も〜全然眠れなくって。
- ー
- うわぁ、そんな風になるんだ・・・。
- 祖母
-
じゃがいもが熱とるから、
じゃがいもをおろし金ですったのを布で包んで
目にあてて寝たのよ、最初の頃は。
- ー
-
鉄骨の仕事以外にも、
夜はトラックの運転もしてたんでしょ?
- 祖母
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そう。昼間は工場で働いて、
夜は一輪車とかトレーラーとか、
農業に使う機械をトラックにつけて、山形から
青森とか福島とか、福島より南にも行ったかなぁ。
行きはじいちゃんが運転して、
帰りはばあちゃんが運転して。
- ー
- ばあちゃんも運転したんだ。
- 祖母
-
そうだよ。今はもうできないけど、
おっきいトラック運転できたんだよ。
仙台の街中だって、運転したんだから、おっきいトラックで。
じいちゃんの下の兄弟5人と、子供たち3人と、
お姑さんとお舅さんと、面倒見るのに
必死で働いたんだ。
- ー
- へぇ。
- 祖母
-
じいちゃんの一番下の弟は、
始発の汽車に乗るからばあちゃんは3時半に起きて、ご飯の支度。
昔は電気釜じゃなくて、薪でご飯炊くんだげっど、
最上川さ流れるのを拾ってくるから砂ついでで燃えないんだ。
嫁いだころは上手く炊けなくって、
生米とごはんの間みたいなの弁当箱に詰めてたなぁ。
赤ちゃんにおっぱい飲ませながら、ご飯炊きしたんだよ。
(つづきます)