古賀史健×糸井重里 2人の仕事論。
第3回 刺激
- 糸井
- どうですか?逆に。
言いたくなる気持ちは。
- 古賀
- いや、僕は、そうだな。
やっぱり、つい業界のためとかってことを言っちゃうし、
考えちゃうんですよよね。

-
例えば10年前、20年前、自分が新人だったころは
こんなにかっこいい先輩たちがいたんだって。
-
今自分らがそれになれているんだろうかとか、
今残ってる50代60代の中にどれくらい
かっこいい人達がいるだろうと思うと、
やっぱり昔の思い出の方がかっこよく見えるんですよ。
- 糸井
- そうですね。
- 古賀
- その時に若くて優秀な人が、格好いいなとか
入りたいなって思う場所に
なってるかどうかっていうのは、
たぶん端的に言ってネット業界とかの方が
キラキラして見えるはずなので。
-
だから多少のキラキラとか、何て言うんですかね、
羽振りの良さみたいなものとか
そういう、サッカーの本田圭佑さんが
白いスーツ着たりとか、ポルシェに乗って
成田にやって来ましたとか、、
- 糸井
- あえてやってますよね。
- 古賀
- はいはい、ああいう演出とかも、何かしら
出版業界の中とか、僕らみたいな立場の人間が
多少はやった方がいいのかなという思いも
若干あるんですけど。
-
でも、今の糸井さんの話を聞いて、
もしそれを三日三晩今の自分に
問いかけたら、、(笑)
- 糸井
- (笑)
- 古賀
- と思いますね。
問い詰めると、どこかにはチヤホヤして
欲しいという気持ちはあるんで、
それを良くないことと片付けるのは
あまりにも勿体ない原動力だから。
- 糸井
- 人間じゃなくなっちゃうってとこがあるからね。
- 古賀
- はい。

-
だから、チヤホヤされたいとどう向き合って、
そこを下品にならないようにとか、人を傷つけたり
しないようにとかの中で自分を前に進めていく。
というのが今やるべきことなのかなという気はします。
- 糸井
- ほんとのこと言うと、
やるべきことなのかどうかもわからないんですよね。
つまり変なハンドル切り方してみないと真っ直ぐが
見えないみたいなとこがあって。
-
ぼくはよく「昔はみんな立ちションベンしてたんだよ」
って言い方をして。
地方に住んでた人は、もっとですよね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 田んぼと都市の境目みたいな場所だらけになったから
田んぼや山の中でするのはおかしくないわけで、
重なってる領域みたいな所に
みんな生きてるわけだから、立ち小便してた。
-
それから、今倫理的にものすごくあちこちで
追求されるけど、お妾さんのいる人とかって
いくらだっていた。
今の基準でいい悪いって言うのは簡単ですよ。
答えわかってて、その後押ししてるわけだから。
-
だけど、ああいう時代に生きてたっていうのが、
ぼくの中にはまだやっぱりそっちに
尻尾が付いてますからね。
だから、比べる機会がものすごく多いんですよね。
あのままそっち行ってたら、これは今袋叩きだぞと。
そんなこと山ほどあるんだけどね。
- 古賀
- ああ、わかります。
- 糸井
- 今ってスタートラインをリセットでゼロにしてすぐ
チェックし合うみたいなことになるじゃないですか。
歯に青のり付いてない?みたいに。
でも、青のり付けちゃった方が
人として健全な免疫というか、
それを作れるんじゃないかなと思うんですよ。
-
今、ネットの方が華やかに見えるって言うけど、
あれやってる人は痙攣的に楽しいんじゃないですかね、
楽しいとしたら。
ピリピリするような。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- やっぱり追い抜く方法を
自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。
- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- ぼくがコピーライターやってる時にも
それの浅いやつはありました。
だからあいつがこのぐらいのところで
出してくるんだったら、
俺はそれよりずっと飛んじゃいたいなとか。
-
でも今って、僕の時代が月単位で動いてたとしたら、
月刊誌の尺度で動いてたとしたら、
週刊さえ超えて時間単位ですよね。
あそこで、俺は裏の裏まで読んでるんだごっこをピリピリ
しながらやってるというのはなにも育たない気がする(笑)
- 古賀
- (笑)だから、先日糸井さんが
3年後の話というのを書かれてたじゃないですか
- 糸井
- あれビリビリくるでしょ。俺に来たの(笑)

- 古賀
- (笑)でもそこの時間軸をどういうふうに
設定できるかというのがすごく大事で。
見えもしない10年後20年後を語りたがる人って…
- 糸井
- まずそれは嫌だね。
- 古賀
- そうですね。
そこで満足してる人達というのは若い人達にも、
ある程度年齢がいってる人達にも結構たくさんいて、
ほんとに今日明日しかないんだという。
だってわからないじゃん!って。

-
僕もどちらかというと、そういう立場だったんですよね。
でもそこで考えに考えたら、3年先にこっちに
向かってるとかあっちに向かってるとかの
大きなハンドルは切れるんだっていう、、
あれは結構ビリビリきましたね(笑)
- 糸井
- それをだから、ぼくは今の年でわかったわけです(笑)
- 古賀
- ああ(笑)
- 糸井
- 古賀さんの年でも、わかる人はいるかも知れない。
だけど、そんなに簡単にその考えになりたくない
みたいなところがあって、たぶん抵抗するんですよね。
- 古賀
- うんうん、そうですね。
(続きます)