第5回 ケンカを売っているとしか思えない履歴書。

糸井
面接って、
ぼくがふだん受けているインタビューと同じですね。
ある編集者に対しては、
2人で物を作っていこうと思って
答えたりすることができるけれど、
つまんないことをいい加減にやられると、
ぼくは、そのサイズの答えしか返せなかったりする。
ぼくも相手に選ばれてるわけで、
「糸井ってつまんねえな」って言われたら、
やっぱりがっくりきますからね。
その恐怖はあるんですよ。
その意味では、面接って、
その場でのセッションですよね。
面接官も、一緒におもしろくなりたいんですよ。
‥‥セッションって、練習はできるのかなあ。
塚越
練習は意味ないかもしれないですね。
履歴書とかって話のネタだけですし。
こいつと一緒に仕事をしたいと思えるかどうかを
見ているわけですから。
糸井
ぼくは実際に履歴書を見るときに、
きれいな字だからって評価しないけど、
とても汚い字は、悪く評価します。
履歴書なのに、見にくい字を書く人って、
どういう気持ちで書いてるんだろうと思う。
普通に書けば丁寧に書けるはずですからね。
下手なりに、きれいに書くことはできる。
それを拒否してるというのは‥‥
ケンカ売ってるのかよと思ってしまうんです。
塚越
意図的ですよね。
それはケンカ売ってるんじゃないですか。
会ってみると、どうなんですか。
入る意思があって、ケンカ売ってるんですか?
珍しいタイプですね。
糸井
入る意思はあるように見えるんですけど、
字を書くときには、
全く考えてないんですかね。
ぼくにも見当がつかないです。
塚越
ぼくは幸いにも、
そういう履歴書にあったことがないです。
糸井
それは、有名な会社だからですよ。
その辺のマナーが守れる子が来てるんです。
塚越
確かに糸井さんが言うように、
そこのところの、最低限のマナーですけど、
表現じゃないですか。メッセージですから、
あえて汚い字を書くことをしてるとすれば、
それはケンカ売ってるだけですよね。
糸井
相手が、どう読むかということに
気がつかないということですよね。
就職試験について
「何も守らなくていいんだよ」って
言い切れないのは確かで、
その辺の最低ラインってなんだろうというのは
やっぱりありますよね。
塚越
友達が指摘してあげたほうがいいかもしれないね。
一生それじゃ、かわいそうだね。
糸井
これなんだよ、塚越さんといておもしろいのは。
若い子に対してその優しさはなぁに、それは?
塚越
好きか嫌いかってあるんですよ。
面接だって好きな人を入れてるわけですから。
学歴とかそういうのじゃなくて、
この子と一緒に仕事をしようと思って、
好きだから選んでるわけですから、
どこかにそういうのあるんですよ。
好きな子だったら
「お前そこ良くないからやめろよ」とか。
糸井
でも好きになられるっていう
練習はできないんですよね。
なんで好かれるんだろう、
字の汚い某くん。
いないよ、そういう子は。
塚越
字は汚いけれども、
他に何かがあるとすれば、なんです。
意図的にやってるんだとすれば、ダメですけど、
意図的じゃない何かがあるんだとすれば、
そこは見てあげたい気がするんですよ。
雇う人によって、ちがうのかもしれないですね。
糸井
そこはすごく重要な気がするんですよ。
つまり完璧なんて求めてないんだよって
さんざん言ってるのに、どこかのところで、
自分の中にそんな小さいことを
プチンっていってる自分というのは、
ダメだと思うんです。
面接官としてちょっとダメだと思った。
塚越
そうですか。
糸井さんは、クリエイティブとかそっちの人の
構造なんだと思うんですよ。
ぼくビジネス型でしょ。
だから自分の才能って何よって考えたときに、
五十歩百歩なんですよ、組織の中では。
(明日に、つづきます)




そんなに忙しく働いて、
私生活はあるんでしょうか。

質問者5(男性):
大学の3年生です。
ぼくの周りの子は学校に来るひまがなくらい働いて、
学生団体を引っ張ったりする人が、ちらほらいます。
ぼくはだらだら過ごしてきた人間なんですけど、
ああいうのを見て
カッコイイなと思うようになりました。
でもカッコイイと思う反面、
そんなに働いて、私生活とか、結婚とか
あるのかなと思って、不安になるんです。
たとえば産休ってどのくらい
取るもんなのかわからないんですが、
3日で帰ってきたという女性の話を聞いたりします。
すごいなと思うんですけど、
そんなふうに働くことができるのかなと
不安になります。



塚越
あなたはすごくピュアなんですよね。
それで、悩んじゃうんですよね。
糸井
よく「寝てない自慢」をする人たちがいるんですが、
それうれしくて言ってるんだから、
ほっとくしかないよ。
影響受けちゃダメだよ。
生き生き見えたりするんですよね。そういうのがね。
そういう人はあなたが生き生き見てくれることで、
生き生きしてるんですよ。
あなた普通に見てれば、
塗り壁が、ボロっと落ちますから。
ぼくもそうやって見せかけてたとき、ありますよ。
「いっそがしー!」みたいな。
でも、持たないです、そういうのって。
50年くらい働くからね、人って。
笑うけどさ、半世紀だよ。
それを産休とか3日で帰ってきて、
持つわけないと思いますよ。
塚越
体は大事にした方がいいね。
体は資本だから大事にした方がいい。
糸井
自分がやりたいと思ったら
やってみたらいいけれど、
見ちゃダメだよ。
へーとか言ってればいい。
塚越
本当に忙しい人ほど、そんなこと言わないと思うよ。
忙しいと言ってる人ほど、危ういよね。
糸井
自分で、ちょうどよくちゃんとできる仕事を
キープするのが、一番難しいんですよ。
でもそれがちゃんとできてると、
1ミリずつ進化するんですよ。
がーっとやって進化したものって、
全部はがれちゃうから、
足し算ですよ、本当に。
ブンブン仕事してるふりをしてる人たちって
絶対に、ものすごい空白が見えるよね、
頭の中に。
そう見せないとやってけないんだなーって
思えば。
塚越
こういうことってあると思いますよ。
「中長期的に見る」ということ。
日本のぼくらってね。
アメリカと付き合ってるとね、
本当に3ヶ月とか単位なんです。
あれは早すぎる。
3ヶ月で利益を最大にするってこと考えてるから、
早すぎて、疲れるんですよ。
中長期的な、ものの見方というのは、
ぼくらのいい点だと、思いますよ。
だから、そんなのあこがれない方がいい。
かっこいいと、思わないほうがいいですよ。
そういうことやってないのに
ちゃんと結果出したように見える人の方が、
おもしろいと思いますよ。。

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2007-05-03-THU

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