イセキさんのジュエリー雑記帖

ロンドンを拠点に
アンティークや
ヴィンテージの
ブローチを探し、
ご紹介していた
イセキアヤコさんの
人気コンテンツ

リニューアルして
かえってきました。
雑記帖という
タイトルにあるように、
ジュエリー全般に
まつわるあれこれを、
魅力的なエッセイと
写真でお届けします。
不定期更新です。

profile

イセキアヤコさんプロフィール

京都出身。2004年よりイギリス、ロンドン在住。
アンティークやヴィンテージのジュエリーを扱う
ロンドン発信のオンラインショップ、
tinycrown(タイニークラウン)
を運営している。

Vol.22 歪なパール(前編)

1900年ごろに制作された雌鶏と雄鶏のブローチ。
素材は、金にエナメル、パール、デマントイドガーネット、
ルビー、ダイヤモンド。
ベルリンを拠点に活躍していたジュエリーデザイナー、
ルーカス・ヴォン・クラナークの作品。
ヴィクトリア & アルバート博物館蔵 museum no. M.1-2019

夏のさんさんと輝く太陽みたいな、金色の大きな南洋パール。
冬の空からぱらぱら降ってくる霰(あられ)のような、
白い粒のシードパール。
真珠はバラエティが豊かだけれど、
大人になってから私が惹かれたのは、
ちょっといびつなパールだった。


とくに、動物モチーフの体の一部に
変形パールが使われたアンティークジュエリーが好きだ。
以前こちらの記事でも少しふれたように、
アール・ヌーヴォーの時代には
形が個性的なパールも人気があった。
完全無欠で凛とした丸いものとはまた違う存在感に
ジュエリーデザイナーたちは想像力を膨らませ、
おもしろい作品がいくつも生まれた。


上の写真は1900年代当時の品で、
ニワトリたちが葡萄畑を歩いているシーンを
ブローチにしたもの。
体の部分に使われているバロックパールのいびつさが
本物の翼の質感を連想させ、
色むらや輝きにも味わいがあっておもしろい。
しかも葡萄の蔓(つる)が
さりげなくハートの形になっていたり、
つがいは愛し合う者同士を意味していたり、と
実は愛情がテーマのブローチなのだ。

 

2020-05-17-SUN

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