Vol.22 歪なパール(前編)
夏のさんさんと輝く太陽みたいな、金色の大きな南洋パール。
冬の空からぱらぱら降ってくる霰(あられ)のような、
白い粒のシードパール。
真珠はバラエティが豊かだけれど、
大人になってから私が惹かれたのは、
ちょっといびつなパールだった。
とくに、動物モチーフの体の一部に
変形パールが使われたアンティークジュエリーが好きだ。
以前こちらの記事でも少しふれたように、
アール・ヌーヴォーの時代には
形が個性的なパールも人気があった。
完全無欠で凛とした丸いものとはまた違う存在感に
ジュエリーデザイナーたちは想像力を膨らませ、
おもしろい作品がいくつも生まれた。
上の写真は1900年代当時の品で、
ニワトリたちが葡萄畑を歩いているシーンを
ブローチにしたもの。
体の部分に使われているバロックパールのいびつさが
本物の翼の質感を連想させ、
色むらや輝きにも味わいがあっておもしろい。
しかも葡萄の蔓(つる)が
さりげなくハートの形になっていたり、
つがいは愛し合う者同士を意味していたり、と
実は愛情がテーマのブローチなのだ。
2020-05-17-SUN