糸井 山下さん自身としては、
社会生活をする市民としての自分と、
とんでもない創造的な山下洋輔とのバランスの
とりかたが、むずかしいんじゃないですか?
山下 それはぼくはあんまりないんです。
よく、むちゃくちゃ
ワガママしているやつが、いますよね?

見てると、
あのぐらいのことでイバっちゃダメだな、
とは思うんです。
どうしてもぼくのハードルは高いんです。
だからその、臆病なんですね。

むちゃくちゃやってる人がいるとします。
「あいつは天才だから許されるんだ」
といわれているとします。
でも、ぼくは「天才じゃねぇよ」と思う。
「あのぐらいのやつのくせに、
 そんなことはできない、傲慢だよ」と。
いつもそう思っちゃうんです。誰に対しても。

カラヤンが何かすっぽかしたとしても。
カラヤン程度でそんなことをしていいの?と。
人の楽器を吹いて、
そのまま質屋に入れちゃう人もいるんだけど。
糸井 (笑)たとえば、
チャーリー・パーカーなら
オッケーなんですか?
山下 オッケーですね。
そのぐらいのスゴイ才能ならば。
タモリ チャーリーパーカーは、実験的に
麻薬をやってレコーディングしたんですよね?
山下 はい。
チャーリーパーカーが
麻薬中毒者だったから、
うまくなりたいアルトサックスは
麻薬をすればいいなんていう説も
あるんだけど、
ただ、あれはまた別問題でね。
体に、合う合わないもありますし。

あの人はむしろ、
「あんなことやってたくせに、すごかった」
と思ったほうがいいですよ。
ふつうの凡人がそんなことしたら、
もうあっという間に破滅してしちゃいます。
糸井 チャーリー・パーカーという人のアルバムを
ききたいと思った人は、
まずは、どれからきくのがオススメですか?
山下 はっきりとは言えないけど、どれでもいいです。
糸井 どれでもいいんですか!
タモリ みんなそういうと思います。
どれでもいいからきいてごらんなさいと。
糸井 そんなこと言われる人って、すごいですね!
山下 ええ、すごいです。
糸井 タモリさんも、そう思う?
タモリ どれでもすごくいいと思いますよ。
糸井 じゃあ、チャーリー・パーカーだったら、
もう、おそわれてもいいくらいですか?
タモリ おそわれても……うん、いいくらいですね。
とにかく、まあ、「痛くしないで」という。
山下 (笑)はっはっはっは!
糸井 (笑)「痛くはしないで」!


2005-05-14 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005