糸井 じゃあ、次の質問にいきましょう。

「ぶっちゃけ、
 スウィングするというのが、
 いまだにわかりません。
 どういった感じなのですか?
 なんか、今さらすいません」

来ました! スウィングの問題が。
タモリ いやいやいやいや、
今さらどころか、
これに明確にこたえられた人は、
歴史上にもいないといわれているんです。
糸井 すごいなぁ……。
山下 すごいですよ。
タモリ いないんです。
糸井 いきなりスフィンクスの秘密みたいな……。
山下 ほんとに、そう。
太古からの秘密。
タモリ ほとんどのミュージシャンは、
「知らん」とかいっています。
山下 「感じるもんだよ」
「口では言えない」
スウィングについての言葉をあつめた、
そういうインタビュー集があるんです。
タモリ ええ。
今までのジャズマンは、
まぁ……教育がないですから、
表現力がないんですよね。
山下 (笑)それとはちがうの!
そういうことじゃなくて!

ただ、やっている側にとって、
「なるほどな」という定義はあります。

誰かがいったのですが、
「同じテンポでやっているのに、
 テンポが速くなっているように
 思える時には、たいてい
 スウィングしているもんだよ」
それは、わかります。

タモリ 有名で、
いちばんわかりやすい感じがそれです。
山下 同じテンポでやっているのに、
なんか速くなって、
なんか高揚していくという……。
タモリ 素人がやると、
ほんとに速くなっている場合がある。
山下 (笑)あはははは!
タモリ 「うわぁ! 俺たちスウィングしてる!」
ちがうちがう、だんだん速くなりすぎて、
テンポが狂ってるだけだなんていう……。
糸井 (笑)なるほど。
つまりスウィングというのは、
『冬のソナタ』的なメロドラマでいうと、
「これは恋かしら?」と思った時の
女心みたいなものなんですか?
タモリ 俺、見てないんです、『冬のソナタ』。
山下 (笑)
糸井 (笑)……じゃあ、他のでもいいです。
タモリ ラブロマンスって、そもそも
人がいい目を見ているという……。
糸井 マズいところに突っこんじゃったわ(笑)。
タモリ 山下さんに、おききしましょうか。
糸井 これに明確に答えられた
ミュージシャンはいないという
「スウィング」への山下洋輔さんの定義は、
ひとつどうでしょうか?
山下 やっている人どうしで、
ピタッとあう瞬間です。

それから、
ちょっと先が見えて、
「いっしょのことをやっていく」
と感じる瞬間ね。

自分ひとり、というよりは、
相手があってのものだから。

さっき演奏した曲で
そういうところがあったから、
じゃあ、やってみましょうか。


2005-05-02 (c)Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005