イトイの読んだ本、買った本。
 
イトイの読んだ本
『リクルートのDNA
 ー起業家精神とは何か』

著者:江副浩正
発行:角川書店
価格:¥ 720(税込)
ISBN-13:978-4047100879

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イトイはこう言っている。山っ気のある本がいっぱいある、経営の分野の本の中で最近、とても本気になって読めた1冊です。
ぼくは、もともとリクルートという会社には、
ある種の敬意を払っているんです。
その時代その時代において、
「なるほどなぁ」と思わせるようなことを、
ずっとやり続けてきていると思う。
リクルート出身の人たちの活躍ぶりも、
いっぱい目にしているし、
ひとりのユーザーとして
リクルートの活動に接することもあったし、
逆にリクルートに講師みたいな仕事で
おじゃましたこともありました。

自信たっぷりなリクルートの人たち、
逆に、じぶんたちを過小に評価している人たち、
いろんなリクルート関係者に会いましたが、
いつもなにかしら「問題」を発見してきたんです。
その人と会ったせいで、いいにつけ悪いにつけ、
ぼくの考えを進化させなきゃいけないことに、
なるんです。
いいにつけ悪いにつけ、ですけどね。
「この人のこの考えは、どうしてこうなるんだ?」
みたいなことを、考えざるを得なくなるわけです。
他の会社の人たち以上に、
リクルートという会社の人たちや、出身者に会うと、
そういうことになりがちなんですよ。

だから、知りたくなるわけです、リクルートのことを。
これまでにも、何度かリクルート関係の本や、
リクルート出身者の書いた本を読んできましたが、
ひさびさに、また、一冊手にしたわけです。
「創業者」である江副さんの本ですしね。

以上、「なぜ、この本を読みたくなったか?」を、
記すことで、この本の感想に代えさせていただきます。
副題の「起業家精神とは何か」は、重要ですね。
景気もすっかり悪くなってて、
出る杭はいままで以上に打たれるいまだからこそ、
「起業家精神」が大事だと思っています。
思えば、ぼくらのやってることも、
起業家精神がなかったら、あり得なかったですから。
 
乗組員も読んでみた。
この本は、情報サービス業のリクルート社創業者である
江副浩正さんによって書かれた本です。
「人前で話すことが苦手」と自分を評する江副さんが
その考えを社員に伝えるためにつくられた
「社是」や「社訓」、
「マネージャーに贈る十章」など、
もともとは社員のために作られた文章が
作られた背景とともに書かれています。

また「私が学んだ名経営者の一言」として
江副さんが影響を受けた、
豊田英二さん、松下幸之助さん、
本田総一郎さん、稲盛和夫さんといった、
日本を代表する経営者の言葉も引用されています。
そして江副さんが
夢中になって繰り返し読んだという
ドラッカーの本からの引用もあり、
「リクルートのDNA」というタイトルながら、
結果的には、
「リクルート以外の経営に関する言葉のつまった本」
としても、読めると思います。
その意味では、
おトクな1冊と言ってもいいかもしれません。

しかし、逆に言えば、
有名な経営者が記した本や
リクルート出身者の本を
すでに多く読まれているかたにとっては
新たに知ることは少ない本になるかも、とも思います。

実は、この原稿を書いているわたし自身、
この本を読んで新しい発見がたくさんあったかというと
そういうわけではなく、
知っていることをあらためて把握する、
という感じで読み終えました。
というのも、個人的な話になりますが、
私は7年ほど前まで
リクルートグループの会社に勤めており、
そのせいで、この本を客観視することが
なかなか難しいのです。
逆にいえば、そのくらいわたし自身に
リクルートのDNAが刷り込まれている、
つまり、江副さんの書かれた言葉が
頭や心のどこかに残っているのだろうな、と思います。

ある時期のリクルートについて考えるとき
昭和の高度経済成長期のような会社
だったのではないか、と思うことがあります。
リクルートを「卒業」して
自分の会社を立ち上げる人材がいる、
というのは、世間一般から見れば、

「リクルート出身の人は、
 どんどん世の中に出てくるね。
 人材輩出企業なんだね。」

ということなるのですが、
リクルートそのものにとっては、
構造的に管理職の人数が
少ないということでもありました。
つまり、20代で入社した人の上司が30歳前後で、
「部下をきっちりと導くには若すぎる」
ということがしばしばありまして、
これは、戦後の復興期、
その上の世代の人数が極端に少ない中で
バリバリ仕事をしてきた
いまの団塊の世代の人々との関係に
近いのではないかと思うのです。

若い人を育てる側が少ない、
という側面がある一方で
上司の目が届かないからこそ、
生まれてくる新しいアイディアや意外な行動が、
リクルートの原動力になっていたのだろうな、
と思います。

「凡庸な人間でも精一杯頑張れば、
 ある程度のことができる一例」
(本書より引用)

として、経営本をほとんど読んだことがないかたや
リクルートのことをほとんど知らないかたにとっては
「リクルートってどんな会社?」
「起業家ってなに?」
という疑問について知る、
手がかりになる本だと思います。
2010-04-24-SAT
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