イトイの読んだ本、買った本。
 
イトイの読んだ本
『運に選ばれる人 選ばれない人』
著者:桜井 章一
発行:講談社(講談社+α文庫)
価格:¥ 680(税込)
ISBN-13:978-4062810913


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イトイはこう言っている。
「雀鬼」とあだなされる人です。
いろいろな会話のなかで、よく出てくる名前です。
しかし、女性の書いたもの、女性の会話のなかには、
あんまり登場しない名前です。
どういえばいいんでしょうか、
「桜井章一」という名は、
ガキごころをくすぐるんですよね。
「二十年間無敗」という神話みたいなものまである
麻雀の鬼だっていうんですから。

しかし、麻雀をしないぼくは、
読んだことがなかった。
でも、ぼくのガキごころが「読んでみようよ」と、
誘ってくれたんですね。
で、何冊か入手しまして、一度に読んだわけです。

どう言ったらいいかなぁ、
まさしくいまの時代の武芸書みたいなものかもしれない。
経験と、その経験のなかで深めた考えが、
身になってしまっているんだろうなぁ。
おそらく「録音」したものを
ライターが文字にしているのでしょうが、
語っていることに「よどみ」がないんですね。
ライターが調整して「よどみ」なく見せているのではない。
きっと、ほんとうに桜井章一という人は、
確信を持ったことを、そのまま語っているのでしょう。
「文体」というのではないな、
「語り口」が、いわば名文の趣なんです。

あれこれと、事情をかんがみたり、
ほんとにこれでいいのか、という迷いのあることを、
いかにも「断定的」に言っているわけじゃない。
いったん、考え終わってるんだろうなぁ。
これは、いまの「混迷の時代」とかには、おもしろいです。

決断とか、断定とか、
「断り」を無数にくりかえしてきた人の言うことは、
あらゆる男を「後輩」にしてしまうよね。
奇をてらってキャッチーなことを言うのでなく、
太い幹の部分では「あたりまえ」ということを、
迷いなく言ってくれる‥‥これ、
まさしくガキたちが、ついていきたくなる
「先輩」の象徴じゃないですか。

色川武大さんの『うらおもて人生録』を、
教科書のように読んだぼくとしては、
いままで知らなかったおもしろい先輩の話を、
ふむふむと首肯きながら聞くように、
続けて何冊も読めました。

 
乗組員が読んでみた。
運やツキを信じる人と、信じない人が
いらっしゃると思います。
私は信じているほうです。
そして、自分は運がいいと
根拠なく確信すらしていましたが、
この本を読んで、
「え? 運ってそういうものだったの?!」
と、おどろきました。

・運は瞬間瞬間に動いていて、
 その動きはしょっちゅう変わっている。
・その動きは感じて読みとることができるもので、
 変化の流れをつかんで乗りこなすことができる。

「運」って、もっとあいまいで、
なんとなく行ったり来たりしていると思ってました。
ところが、わかる人には、刻々と変わる運の流れが
大きい波から小さな波まではっきり感じとれるそうです。
すごいです。

では、どうしたら運の変化の流れをつかんで、
乗りこなすことができるようになるか?
桜井章一さんはこの本で、
88にものぼるヒントや心がまえを語っておられます。
ひとつひとつのお話は、しごく真っ当で本質的で、
「イトイさんも同じようなことを言ってたな」
「ああ、このアドバイス、もらったことある」
と思うお話が多く、
根っこのだいじなことは同じなのだなあーと、
すなおに入ってきました。

もちろん、この本に書かれていることについて
つかめてないことがいっぱいあります。
でも、とにかく、自分でもやれることから、
ひとつずつ実践してみようと思ったのです。
いまやっているのは「間に合わせる」。
「運のよしあしは、
 変化に間に合うかどうかだ」と書かれていました。
運の波に間に合う、なんて
思いついたこともなかったです。
そんなわけで、GOと思ったら、とっととやる。
まよったり、もたもたして人を待たせたり、
できつつある流れを止めないように心がける。
自分ひとりではできないことが
ほんとに多いのですが、
こまったときや、止まりそうになったときは、
みんながかならず助けてくれます。
ありがたいし、うれしいし、たのしいし、
なんとなくリズムができてきたみたい。

常識やいままでよかれと思っていたことに
とらわれないでのびのびできるし、
未経験のことがおきても、
たくましく生きていけそうです。
この本に出会えてラッキーと思いましたし、
元気になりたいかたや、
少しでもよい方向に向かいたいと思うかた、
ちょっとでも、ぴんっときたかたには、
おすすめです。
2010-03-13-SAT
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