イトイの読んだ本、買った本。
 
イトイの読んだ本
『もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの『マネジメント』を読んだら』

著者:岩崎 夏海
発行:ダイヤモンド社
価格:¥ 1,680(税込)
ISBN-13:978-4478012031

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イトイはこう言っている。
タイトルを見て、もう、なるほどと思って買いました。
予想どおり、いわば
青春野球マンガのように読めるのですが、
最後まで読ませる力があります。

ドラッカーの考え方や用語を、
いまじぶんの立っている場所に当てはめて整理する、
ということを、熱心な読者は
みんなやってきたのだと思います。
でも、まさか高校野球部の女子マネージャーまでが、
こんなふうに実用化できるとは‥‥というアイディアを、
じょうずに楽しませてくれる工夫があちこちにあります。

ドラッカーを「教養として読むだけ」の人たちよりも、
何倍も、この女子マネージャーのほうが見どころがある。
もちろん「寓話」仕立てですから、
登場人物の性格やら筋立ては、
都合よすぎる風に展開していくのですが、
そのくらい、いいじゃないですか。

たぶん、作者がいちばん苦労したのは、
高校野球部にとって「顧客」とは何か?
というところの説得力だったのではないでしょうか。
そこが、あらゆる意味で最も肝心だったと思います。
 
乗組員が読んでみた。
「ほぼ日」でも、
「バー・ドラッカー」
ハードボイルド風な男性が
ドラッカーの言葉を借りて
毎夜女性を口説く、なんて設定がありましたが
この本でドラッカーを語るのは
甲子園出場を目指す
高校野球部の女子マネージャーです。

ドラッカーといえば、
社会人やビジネス書という印象が強い中で、
女子高生にドラッカーという
なんとも「ミスマッチ」な設定に加えて
表紙や挿絵には、従来のドラッカー本の
硬いイメージとは全く正反対の、
かわいらしい女子マネージャーの絵。
正直な第一印象を言えば
私にとっては「かなり苦手な本」でした。

そんな先入観もあって
はじめはどうしても身構えてしまったのですが、
読み進めていくたびに、
「自分はこれができてるだろうか」という
私自身の仕事ぶりを照らし合わせてしまい、
意外にも主人公に共感したり、感心したり、
なにより、大変勉強させられてしまいました。

ドラッカーの本は
『ドラッカー入門』をはじめ
まだ数冊しか読んだことはないのですが、
それでも、ドラッカーの言葉に触れるたび、
いつも励まされます。
一方で実践に置き換えるときには
「本当にこれができるのだろうか」、
「具体的にはどうやればいいんだろう」と
何度も自問自答を必要とするような難しさを
同時に感じることがあります。

ところが、この本に出てくる主人公は
『マネジメント』に忠実に、
恐れずどんどん実行していくんですよね。
うまく行き過ぎてるような部分もあるのですが、
それを引いても、
野球部がかかえる様々な問題に対して
主人公たちが答えを出す道筋や
それを真摯に実践していく様子が
具体例として示されていて、
「そうか、こう考えたらいいんだ!」という
アイデアやヒントをもらってしまいました。

物語、ということをさておいても
ドラッカーの言葉に触れ、
主人公が情熱的に甲子園出場に向けて
頑張っている姿を見ていたら
私も『マネジメント』を読んでみたくなりました。
自宅の本棚に眠っているのを発見したので、
これを機に読んでみようと思います。

肝心の甲子園がどうなるか、
青春小説の行方も楽しめますよ。
2010-02-20-SAT
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