イトイの読んだ本、買った本。
 
イトイの読んだ本
『つぎはぎだらけの脳と心ー
 脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神を
 もたらしたのか?』

著者:デイビッド・J.リンデン
翻訳者:夏目 大
発行:インターシフト
価格:¥ 2,310(税込)
ISBN-13:978-4772695169


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イトイはこう言っている。
脳のことを書いた本は、たくさん出版されています。
書いた人の専門の研究分野が、
どういうものか、によって、
語りたい内容や、切り口もずいぶんちがってきます。
これは、池谷裕二さんが「尊敬するリンデン教授」という
言い方で紹介しているので、読みたくなってます。
サブタイトルが
「脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神を
 もたらしたのか?」
ですから、こりゃおもしろいでしょうねぇ。
 
乗組員も読んでみた。
「ほぼ日の睡眠論」で池谷裕二さんが教えてくれた
「ねむりと記憶」は、いまでも強く記憶に残っていて、
たとえば、脳は情報を集めることと保存することが
同時にできなくて(パソコンにはできるのに)、
寝ている間に、集めた情報を記憶する、とか、
深い眠りのときに記憶の圧縮が起きる、とか、
記憶の圧縮が起きているときに、
「気づき」や「ひらめき」が得られるのではないか、
と、そんなお話をしてくれたのです。
(この連載をまだ読んでおられない方は、
 おすすめです。ぜひご一読ください)。
このお話は、脳について、
中学校で習ったことくらいしか知らない私にも、
とてもおもしろかったです。

そして、この本は、池谷さんのお話とも
きれいにつながっていたおかげで、
かなり親近感をもって読めました。

脳は高度に設計されたすごいものではなくて、
進化の段階ごとに、その場しのぎにつぎたされた
寄せ集めの偶然の産物でしかない。
だからこそ、自らのスペックの悪さをカバーするために、
いろいろやっているうちに、
愛、夢、記憶、神など、人間らしいものが生まれた
‥‥というお話なのですが、
正直、前半の脳の進化のプロセスや、
脳の機能や構造の話など、
いわゆる脳についての
最新の基礎知識の紹介のところは、
自分に基礎知識がないゆえに、
けっこう手こずりました。
ところが、中盤を越えるころから、
愛や記憶、夢の話になり、
どんどん、おもしろくなってきて、
あら、これも脳のおかげ?
えっ、これも脳がやってるの?
と、知らぬまに自分の脳が起こしていることに
びっくりしました。

「氏と育ち」は、どっちが人に影響する?
エッチは、ひとりでするより、
相手がいたほうが、なぜ気持ちいい?
たのしい夢と怖い夢だと、
怖い夢を見ることが多い気がするのはなぜ?
‥‥まあ、とにかく、「へえー!」の連続。
全章に渡って、具体的な事例や、
実験例もたっぷり紹介されていて、
世の中にはそんな実験をする人もいるのかと、
それもまた新鮮でした。

きっと、著者のリンデン教授は、
ユーモアがお好きなんだと思います。
全章に渡って、にじみ出てましたし、
(おかげで専門用語が出てくる
 難しそうなところも乗りきれました)
最後の「参考文献」の紹介さえも、
かならず、一言コメントがそえてあり、
これも、すぱっと核心をついていて痛快でした。
「参考文献」のページで笑えた本は
これがはじめてです。

脳について知りたいときに、
道案内として押さえておきたい本です。
すでにくわしい方にも、
これから知りたいという方にもおすすめです。

2009-12-26-SAT
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