『ミッケ!』の秘密を
ミッケ!

いつのまにか110万部になった
おとなも夢中になる「遊びの絵本」とは?


みなさん、darlingが訳を手がけているゲーム絵本
『ミッケ!』、ご覧になったことはありますか?

お子様のいらっしゃるご家庭のかたは、
もうお家で遊ばれているかもしれませんが、
この本、実は、大人が遊んでも、
めちゃくちゃはまるんですよ!

(ケーキを賭けて『ミッケ!』に没頭した
 ほぼ日30代+20代女子一同の証言より)

現在、全シリーズ(1〜8巻)を合わせて、
110万部を突破する勢いなんです。
(全米では既に700万部のベストセラーシリーズに!)

全ページが写真家ウォルター・ウィック氏
ワクワクする立体写真で構成されていて、
各ページの下に、
その写真に隠れているさまざまなものを探させる
謎かけの言葉が書かれています。

たとえば、こんな言葉です。

「ボタンはみつかるね。/
 くるみのからでできたボート。/
 ヘアピンはあんなところか。」


その答えが見つかったときの嬉しさは、
子供の頃に、なぞなぞの答えが
わかったときの嬉しさと
全然変わりません!
でも、これがなかなか
見つけられないんですよねえ。
巧みに「ひっかけ」も用意されていたりして。

遊んでたのしむ絵本『ミッケ!』を
語らせたら右に出るものはいない、
この本の担当編集者、桑原さんに
今回は、この本の人気の秘密について、
お話しを伺いましたよ!


小学館の桑原さんです

●「I SPY」が「ミッケ!」に。

ほぼ日
 
4月10日に発売された
『ミッケ!』シリーズ8巻目も、
すごく好評なんですよね!
おめでとうございます!

この絵本は、アメリカのものですが、
もともとはどこで探して
来られたんでしょうか。


今回発売された
『ミッケ!』シリーズ8/「がっこう」
桑原 フランクフルトで見つけました。
毎年ブックフェアに年に2回行くんです。
その時に、当時の上司が、初めて見て、
面白いっていうんで、
「やろう!」ってスタートしたんです。
それが、10年ぐらい前。
それが最初の『ミッケ!』でした。
ほぼ日 どのあたりが面白いと、
その時、思われたんでしょうか。
桑原 普通、こういうゲーム性のある本は、
1回やると、答えがわかるので、
後でもう一度やり直したりしないじゃないですか。
でも、『ミッケ!』は、後から後から
実は隠されていた答えを見つけられたりして、
何度も何度も楽しめるんですよね。

そのときは1冊しかないものだと
思ってたんですが、
実はシリーズ化されていて、テーマを変えて
後から続々とアメリカで出版され始めました。
ほぼ日 今は、全部で8冊ありますよね。
桑原 はい。
最初はあまり売れていなかったんですが、
日本でもシリーズで出していくことにしました。
ほぼ日 この6冊目の「ゴーストハウス」は、
かなり面白いんですよねえ・・・。
ちょっとこわくて。
(パラパラとページをめくる)

糸井がこの絵本の翻訳をすることになったのは
どういうきっかけだったんでしょうか?
桑原 実はこの訳なんですが、
いちばん難しいと思ったのは、
タイトルなんですよね。
アメリカのタイトルは、
「I SPY(アイ スパイ)」です。

これを子供にわかりやすいように訳すには、
どんなタイトルにしよう?っていうのが、
ずーっとわからなかったんです。

それから、
この絵本の【問題】にあたる文章が、
英語では、やっぱりこう、
韻を踏んでるんですよね。
歌みたいになっている。
日本語だと韻を踏むことって難しいから、
そこをうまくリズムに合わせて
訳して下さる方って誰だろう、ということで、
「糸井さんなんじゃないか?!」
ということになったんです。

そしたら引き受けていただけて。
すごく嬉しかったなあ。
ほぼ日 この『ミッケ!』は、隠れんぼなんかで、
相手を見つけた時の
「見っけ!」なんですよね。
桑原 そうです。
子供たちが何かを発見できたときの
喜びの言葉ですね。

もともと「I SPY」はどういう意味かってことを、
英語のできる人に訊いたんですよ。
そうすると、これは海外で、部屋の中なんかで、
「探しっこ」するときの最初の言葉らしいんです。
「I spy with your little eyes.」
「I spy blue thing in this room. 」とか。
この部屋にある青いものを探してごらん
、っていう、なんとなく、ちょっとリズムを付けた、
でも、歌じゃないもの。
日本語でいうと、
♪にらめっこしましょ、あっぷっぷ♪ みたいな、
そういう時に使う、
最初の言葉だっていうのがわかったんです。
ほぼ日 原題の意味に、感覚として近いですよね。
桑原 そうなんですよ。
すごく素晴しいなって思って。
ほぼ日 オソロシイ、うちの社長。
『ミッケ!』というタイトルひとつで、
この楽しみ方の全部が見えてきますよねー。
桑原 それから、この糸井さんの訳文が面白いです。
いわゆる五七五みたいなリズムで
訳していただいていて、
読んでいるだけでも、楽しいですよね。
ほぼ日 糸井は、自称「趣味の作詞家」ですから、
リズミカルに言葉を使うのって、
好きなんですよね。
でも、実は、けっこう苦労して
訳しているみたいです。
これ訳す日っていうのは、
他の仕事を一切入れずに
家にこもって出てこないんです。

●問い合わせが来る絵本。

ほぼ日 最初はそんなに注目されていなかった本が、
だんだん人気が出てきたっていうことですが、
その理由ってなんでしょうか?
桑原 最初はいわゆる平面的な写真が
多かったんですよね。
ウィックさんが立体的な写真を
撮るようになって、段々と本が売れ出しました。


ガラスの板にはりつけて撮影すると・・・↓

こうなります。


これが、↓

こうなります。
ほぼ日 すごいセットですよねー。
桑原 文章担当のジーン・マルゾーロさん
ウィックさんが、コンセプトを話し合って、
テーマに合わせた小道具を
カタログやアンティークショップや
屋根裏部屋から見つけてくるらしいんですよ。
それが一番大変だろうなあと思います。
ほぼ日 たしかに初期の平面写真の時代と比べて見ると、
立体になったことで、
一気にワクワク度が増しますね!
イラストは一切使ってないんですよね。
桑原 イラストはないですね。
「写真がきれいだから」
って買って行かれる
女性もいらっしゃるって書店で聞きました。

いちばんすごいのが7巻目の
「たからじま」です。
縦横が5メートルもある大きな町の
ジオラマを作って、
それを5つの方向からカメラで撮って、
5場面の写真ができたんですよー。
いやあ、すごい。


『ミッケ!』シリーズ7/「たからじま」より
ほぼ日 このウィックさんとマルゾーロさんは、
アメリカでは主にどんなお仕事を
されているんですか?



マルゾーロさん(左)とウィックさん(右)
桑原 ウィックさんは
300誌くらいの雑誌の表紙を
撮ったりされているかたです。
それに、もともとゲーム本が
すごく好きらしいです(笑)。

マルゾーロさんは、『ミッケ!』の
アメリカ版を出してる出版社の
編集者でした。
自分で子ども向けの本も
どんどん書いてらっしゃるらしいんです。

2人は、一つ一つの写真に、
子供たちが自分自身のストーリーを
それぞれが見つけてくれたらいいなあ、
と思って
この本を作られているそうです。
ほぼ日 ああ、それすごくわかります。
子供のころって、1人で遊ぶとき、
よく勝手なストーリーを作って、
リカちゃん人形や、字のない絵本で遊びました!
桑原 (笑)
中には、
「あの本に載ってた写真の積み木、
 買いたいんですけど」

って、お母さんから問い合わせが
あったりします。
「どこで売ってますか?」とか言われて。

「ま、ちょっと、日本じゃなくて、
アメリカで作っているので、
すいません、わかりません」と言いながら
こっちもお返事したりしまして。(笑)
思わぬ電話が来ますね。
ほぼ日 へえ!
絵本で問い合わせが来たりするって、
みんな真剣に遊んでくださってる証拠ですよね。
桑原 あ、でも、いちばん多いのは、
「とにかく見つからないから
 教えて下さい」

って電話です(笑)。
ちょっと怒り気味で。
とくに最近増えましたね。
手紙も来ます。
ほぼ日 教えるんですか?
桑原 あ、教えますよ。
ほぼ日 へえ! ずるいです!(笑)
桑原 でもね、楽しくないと思うんですよ、
教えてもらったりすると。
「答えの本はありませんか?」
っていう電話があったりするんですが、
それがあると、絶対探さないと
思うんですよね。
自分で最後まで探したときの
喜びを味わうことが、
この本のいちばん面白いところだと
思うんです。

そういうふうに説明して、
どうしてもわかんなかったら、
またお電話下さい、
っていうことを言ってます。
どうしてもわからない、
という方に教えてあげると、
「わぁーっ!」って(笑)。
「あ、ここか!」みたいな反応で。
おかしいですね。電話口で大声で。
ほぼ日 (笑)
そうなりますよねえ。
すごく楽しそう。
桑原 家族でやってる方が多いですよね。
「お父さんは、『その答えはこっちだ』、
 って言う。
 娘は、『こっちじゃない』って言って
 ケンカになって困っています」
っていう手紙がお母さんから
来たこともあります。(笑)

でも、『ミッケ!』で遊ぶ前までは、
娘と父親は、話すらしなかった、って
書いてくださっていて。
おかげで仲良くやっています、と。
そういう電話や手紙が、最近多くて、
ものすごく嬉しいんですよねえ。
 

2003-04-24-THU


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