HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その23 満月とマングローブ 

先日、奄美野鳥の会によって主催された観察会、
マングローブナイトツーリングに参加しました。
夜のマングローブ原生林にカヌーで分け入る探検に、
期待感で胸躍らせながら。
折りしも月齢16.3日、十六夜の満月の夜。
大潮の満潮を見計らっての出発です。

月の満ち欠けは海の生き物に大きな影響を与えています。
例えばサンゴの放卵放精は初夏の満月のひと夜の出来事。
無数の卵が一斉に放たれた海はサンゴ色に赤く染まり、
それを狙って魚たちが群れ集います。
陸棲のカニやオカヤドカリにも大潮は大切な日。
夏の時期の満月か新月の夜に競って浜に降り、
腹に抱えた幼生たちを海の中に放つのです。
この他にも満月や新月に出産したがる生き物は実に多い。
大潮の日は干満の差が大きいので、
わが子を波に託して遠くに運ぶには都合がいい訳です。

すっかり日も暮れ、月の出にはまだ間がある時間帯、
満潮で水位が高く、潮の満ち干きも止まっています。
カヌーにとってはベストコンディション。
暗くなった水面を二人乗りのカヌーで漕ぎ出しました。
しばらくは夜風を感じながら役勝川をのんびり下り、
途中でマングローブの狭い水路に入ります。
メヒルギが頭上を覆うあたりは、
干潮時には水がまったくひいてしまう場所だとのこと。
参加者が同時に電燈を消すと、静かな静かな真っ暗闇。
と、パドルで水をかいた部分が青白く燐光を発している!
ヤコウチュウ(夜光虫)です。
虫といっても直径1mmほどの小さな原生動物なのですが、
その割になかなか見事な光り具合です。

両脇のマングローブを電燈で照らしながら、
別の水路をさらに進んでみます。
草につかまって眠っているカワセミがいたり、
木に登って休んでいるカニがいたり。
突然、護岸工事をしている無粋な場所に出ました。
住用村が多額の費用を投じて建設中の
「リュウキュウアユの里」という観光施設です。
目論見違いでリュウキュウアユの故郷を破壊しちゃった、
なんてことにだけはならないよう、切に祈るのみ。

そんな調子で海に出た頃、東の山の端が白んできました。
ついに満月のご登場。
晧々と水面を照らします。
帰りは月明かりで十分、電燈は必要ありません。

やっぱ、月の力は偉大だ!

2000-10-22-SUN

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