HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その22 ガジュマルと妖怪

沖縄出身の歌手Coccoを始めて聞いたとき、凍りました。
女性原理に根ざした情念が炸裂する絶望的な詞の洪水に。
新作『ラプンツェル』では毒も薄まってきたようですが、
第1作目のアルバム『ブーゲンビリア』では
彼女の(男に対する)敵意と憎悪が牙を剥いていました。 
その中にあって「がじゅまるの樹」という曲は
旋律のあどけなさが心休まる瞬間をもたらしてくれます。
と思ったら、甘かった。
歌詞の最後で足元を掬われたような気持ちになります。
音楽著作権を侵害してはいけないので引用は避けますが、
どうしてあの詞はあんな結論になるんだろうという方へ
わたしなりのヒントをさしあげます。

ガジュマルは屋久島、種子島以南に自生する常緑樹で、
どこが幹でどこが根か判然としないもつれ合った樹肌が、
ギーガーの絵のようになまめかしい迫力満点の植物です。
どうしてこんな複雑怪奇な形になるのでしょうか。
最初他の樹上に着生したこの植物は、
空中から無数の糸のような気根を垂らします。
気根は地面につくと同時に急激に生長・肥大して、
支柱状の幹となって自らを支え独立するのです。
その後も枝や幹から次々に気根を垂らし大きくなります。
こうやって結果的に着生した木を枯らしてしまうのです。
ガジュマルやアコウなどクワ科Ficus属の植物は、
この性質のために「絞め殺しの木」と呼ばれています。
ね、Coccoの詞の謎が解けたでしょ?
深読みかもしれませんが。

奄美ではガジュマルやアコウの巨木には
ケンムンという妖怪が住むといわれています。
無断でそれらの木を伐るとたたりがあるとのこと。
ケンムンの伝説は多様で、
山中をひきずりまわされたあげく高熱に襲われたり、
すもうを挑まれて痛い目にあわされたり、
山海場所を問わず変幻自在に出没して悪さを働くらしい。
ときに恐ろしかったり、かと思うと愛嬌があったり、
全体像が掴みにくい妖怪ですが、
本土のカッパや沖縄のキジムナーに近い種族のようです。

絞め殺しの木と呼ばれたり、妖怪が住みついていたりと
おどろおどろしいイメージはその特有の形に由来しますが、
大きく育ったガジュマルの木の下は憩いの場でもあります。
休みの日のお昼どき、木陰でお弁当を広げる家族の姿が…
からまった根は子供たちに足がかりを提供して、
ジャングルジムのような遊び場となります。
頭上に広がった枝葉は夏の暑い日差しをさえぎって、
お父さんの昼寝に格好の日陰を作ってくれます。

とまれガジュマルは、島民の生活に密着した木なのです。

2000-10-13-FRI

HABU
戻る