HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その7 クッカルに雨の大切さを教わった話

すべての動物にあてはまる規則があります。
覚えておいてソンはしません。
もっともトクするかどうかは何とも言えませんが。

それは―動物が生活しているところには必ずエサがある!

なあんだ、そんなことという声が聞こえてきそうですね。
当たり前のことですが、実は意外と忘れがちなのです。
家にゴキブリがたくさんいるようならば
好物の残飯や生ごみがたくさんあるということです。
家のまわりに野良猫が何匹も住みついていれば
誰か近所の親切な人が食べ物を与えているのでしょう。
そうそう、当たり前のことですね。

さて、奄美にはアカショウビンという名の
カワセミ科の夏鳥が数多く渡来します。
地元でクッカル、本土で雨乞い鳥とも呼ばれる人気者です。
鳥の体長は嘴の先端から尾の先端までをはかります。
人間で言えば、顎を突き出して空を仰いだ姿勢の
鼻の先からお尻の一番たるんだ部分までに相当します。
アカショウビンの体長は28cmくらいでその約1/3が嘴です。
不格好なほどに嘴が大きい。
おまけに全身が臆面もなく赤い。
正確に言えば赤というより朱、赤鉛筆のvermilion。
声がまた輪をかけて特徴的。
よくとおる大声で朝夕、キョロロロロロロと鳴くのです。
この声をクッカルルルルルルと聞いてクッカル、
雨の前に鳴くという俗説で雨乞い鳥というわけです。
巨大な嘴にど派手な体色、一度聞いたら忘れない声と
三拍子そろった多くのバードウォッチャーの憧れの鳥です。

そんなアカショウビンですが、
奄美ではこの季節いたるところでその声や姿に遭遇します。
はじめの規則を思い出してください。
ここにはアカショウビンのエサがそれだけ豊富なわけです。
彼らの主食はカエルやトカゲ、サワガニなどの小動物です。
つまり、カエルなどの生物が十分にいることがわかります。
では、なぜそんなにカエルがたくさんいるのでしょうか?
そう、エサの昆虫類が豊富に生息しているからです。
昆虫類のエサはさまざま、肉食もいれば草食もいますが、
つまるところ植物相が豊かだから、昆虫も多いのです。
で、植物相が豊かな一因は、水が豊富だからでしょう。
なにしろ奄美大島はあきれるほど降水量の多い島ですから。

こう考えると、いやな梅雨もこわい台風も冬場の長雨も
なんだかとっても許せるような気分になってきます。
そもそも梅雨を恨んでも土台詮無きこと。
いっそ、雨乞い鳥とともに雨を楽しむことにしましょう。

2000-06-26-MON
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