糸井 じゃあ、つぎの写真にいきますね。
石川 はい、どうぞ。
糸井 上野動物園で動物を撮っても
おもしろみを感じられなかったぼくが、
いよいよ「動物園から出よう」って
思ったきっかけになった写真が、
これなんですよ。
石川 ほぉー。
糸井 上野動物園と外との境界みたいなところに
池があるんですけど、そこで撮ったんです。
池に向かってベンチがあって、
いっぱい鳥がいて‥‥その‥‥
なにがなんだかわからないでしょう?
石川 うん、わからない(笑)
糸井 鳥にしてもね、
ハトがいたり、カラスがいたり‥‥
ほんとに、なにがなんだかわからないんですよ。
で、池のほうを見ると、
こんなふうになってる。
石川 ああー。
糸井 こう、蓮が、あるんですけど、
こういう景色を見て喜んでいいものか‥‥。
まぁ、汚ねぇなと。
石川 はははははは。
糸井 で、ベンチに、人は座ってるんだけど、
まぁ、だいぶ、疲れてらっしゃる(笑)。
石川 この、鴨は、動物園の動物なんですか?
本来は、池の中にいるべきなのに
出ちゃってるんですか?
糸井 ‥‥でしょうね。
というか、もう、わからない。
そのへんの境界が。
石川 ふふふふふふ。
あの、ぼくは、この写真に関して、
糸井さんに質問があるんですけど。
糸井 はい、どうぞ。
石川 糸井さん、これ、なにを撮ったんですか?
一同 (爆笑)
糸井 つまり、なんだろう、
このへんの、わけのわからない状態?
石川 いや、この写真は、いいですね。
糸井 ほんとに、困ってたんですよ、
このへんにいたときは。
動物園の中に戻ると、
動物を撮らなきゃいけない。
それはもう、あきらめちゃってる。
はしゃいでる子どもを撮ってもなんだし、
どうしようかなぁ、って、ほんとに困って、
自動販売機さえ、撮ろうとしてたもの。
石川 はははははは。
糸井 それで、こんな写真が(笑)。
石川 (しげしげと写真を眺めながら)
これ、鳥を撮りたかったら、
木の向こう側に回りこみますよね。
ベンチのおじさん撮りたかったら
どっちか寄るでしょうし、
木を撮りたいんだったら、
縦位置のほうが収まりがいい。
糸井 まさしくそのとおり。
石川 写真を見る側は、「何を撮ったんだろう」とか
「なぜ撮ったんだろう」と、まず考えるわけですが
この写真はそこがよくわからない(笑)。
でも、それは逆にいうと、
見る側を立ち止まらせるし、
見ていて飽きないということです。
謎かけをされたみたいで・・・。
ぼくがこの写真に「おや?」
と思ったのはそのあたりでしょうね。
糸井 このまえに、いちおういくつか撮って、
でも、どれもダメで、困って、
ただここに向けて、
シャッター、押しちゃったんですよ。
で、あとでピックアップするときに、
どういうわけか、これを選んだんですよ。
石川 そうですね。
撮っただけじゃなく、
これを選ぶっていうのも、なかなか。
糸井 なんでしょうね?
ここにいたときの
「ぐだぐだの自分」が
ものすごくよく出てるとは思います。
石川 うん。いいと思います。
‥‥で、ぼくの番ですが、
これに合わせて出せる写真は、
なかなか難しいですね‥‥。
糸井 はははははは。
石川 あ、これだ。これしかない。
糸井 あはははは、
ぐだぐだだ、こっちも(笑)。
石川 ぼくもこれ、動物園を
出るか出ないかというときに撮ったんです。
糸井 困ってるんだね。
石川 そうですね。
糸井 いちおう、パンダは写ってる。
石川 写ってるんですけど、
あきらかに迷いが出てますよね。
糸井 ははははは。
でもさ、これも、石川さんは
わざわざ選んだんだよね。
石川 選んだんですね。
糸井 ぼくの場合は、デジカメだから、
パソコンで見て「これ」って選んで、
プリントアウトするだけですけど、
石川さんはフィルムですから、
ネガ見て、選んで、紙焼きしたわけですよね。
石川 ええ(笑)。
糸井 なんで、焼いたんだろうねぇ。
石川 なんで焼いたのか、
オレもちょっとわかんないです。
糸井 はははははは。
石川 でもこれ、選んでおいてよかったですよ。
ここで出す写真がなくなるところでした。
糸井 ははははは。
  (続きます)
2007-12-03-MON