糸井 つぎのぼくの写真は、
組み写真‥‥というと大げさですけど、
2枚1組の写真です。
石川 あー、ばっちり記念撮影ですね。
糸井 まずは、パンダなんですけど、
ぼくが行ったときには、この状態で。
むこう向いて、寝てるだけ。
もう、こういうオブジェみたい。
でも、それだけでね、
「勝ちだなぁ」って
思わせる力があったんですよ。
まず、これだけでも、
十分にパンダに見えるというのがすごい。
石川 ははははは。
糸井 で、その、パンダの背中をバックに、
子どもとお母さんの写真を撮ってるお父さん。
それをまたオレが撮っているという‥‥。
石川 入れ子ですね。
糸井 また入れ子状態に(笑)。
あとね、撮ったあと、
自分でセレクトしてるときに思ったのは、
自分を含めて、写真を撮ってる人たちが、
こんなに真っ暗なのに
ぜんぜん気にしていないという、
そのことがおかしかったんですよ。
石川 通路が真っ暗だから、
パンダのいる部屋が
スクリーンみたいにも見えますね。
糸井 けっこう暗いんだよね、じつは。
ちゃんと撮りたかったら
フラッシュを焚けばいいんだろうけど、
真っ暗で、OKじゃないですか。
なんていうか、
フラッシュのつまんなさというのを
あらためて感じたんですよね。
この、お父さんのサスペンダーとかさ、
いいじゃないですか。
石川 かすかに見えるところがね。
糸井 そうそうそう。
お父さんの撮りたい一心がさ、
この暗がりのなかにあるんですよ。
で、パンダは、ずーっと同じポーズ。
石川 しかも、パンダ、お母さんと子ども、
お父さん、糸井さんが
一直線に並んでるというのが。
糸井 おかしいですよね。一直線なんですよね。
これ、撮ってるときに、家族がぼくに気づいてね、
お父さんが振り向いたりしてる写真も
撮れたんだけど、
やっぱりそれはおもしろくなかった。
やっぱり、お父さんが「撮りたい!」と
思ってる1枚がおもしろいんですよ。
つまり、お父さんの入魂、イコール、
オレの入魂、なんですよね。
石川 子どもとお母さんも、
いい笑顔ですね。
糸井 そうですね。
大きくいえば、やっぱり、
パンダの力ですよね。
「パンダ力(ぱんだりょく)」。
ほかの動物にはない、すごみがあったな。
石川 じゃあ、ぼくの写真は、これかなぁ。
糸井 お、そっちも組み写真ですね。
石川 また、糸井さんの写真と
構造が似ちゃってるんですけど。
糸井 ああ、なるほどね。
象と、見る人たちと。
石川 似てますね。
パンダと、ゾウが違うだけで。
みんなはここで
携帯で写真を撮っていて、
ぼくはそれを後ろから撮って。
糸井 けっきょく、動物をネタにして
人間を撮ろうとしてますよね。
石川 そうなんですよね。
糸井 ここは、象がいないとつまんないよね。
しかし、この象はいいですね。
なんていうか、象っていう動物の
ヌメっとした感じが写ってますね。
石川 鼻と足がだらんとしてね。
うーん。ほんとに同じ構造だなぁ。
糸井 違うのは、象がいるのが
屋外だっていうことですよね。
だから、光がたくさんきてる。
石川 そうですね。
糸井 そのぶんだけ、なんか、こう、
場にうれしさがありますね。
石川 ああー。
糸井 パンダの前には
そのうれしさがないですね。
石川 人工的な光ですからね。
あとは、まぁ、パンダがもうぐったり
寝てますから、うれしさというよりは、
よどんだ感じがあるというか。
糸井 ちょっと宗教っぽいよね。
ご本尊はパンダの背中(笑)。
パンダ教。やっぱり、
パンダは1匹だからいいんだよなぁ。
石川 (笑)
  (続きます)
2007-11-29-THU